腰痛症患者に対する間接的徒手牽引療法の即時効果

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抄録

【目的】<BR>腰痛に対しては牽引療法を実施することがあるが、徒手牽引療法による効果の報告は少ない。したがって今回腰痛症患者に対して徒手牽引療法を実施し、身体機能の変化がみられたので報告する。なお、発表に際し本症例には主旨を説明し了承を得ている。〈BR〉【方法】<BR>症例は腰痛症を呈した60歳代の男性。27歳に腰椎椎間板ヘルニア手術施行。2011年3月頃より腰痛出現し、8月診療放射線技師によるレントゲンにてL5-S1の狭小化を認め、当院での外来理学療法を開始した。今回実施時において、L4-S1棘突起右外側部に限局した深部痛がみられ、痛みの強さはVisual Analogue Scale(以下VAS)にて3/10。また長時間(1~2時間)の椅子座位保持または起床時にVAS3/10。感覚鈍麻や痺れ、神経学的徴候はみられず、主要筋力の低下もみられなかった。方法は背臥位にて、片側足関節直上部分を把持して約20Kgになるような牽引力で左右下肢それぞれ3分間を2セット(休憩1分間)実施。VAS、指床間距離(以下FFD)、関節可動域(体幹伸展、左側屈)、身長、棘果長を実施前後で測定した。〈BR〉【結果】<BR>FFDが2cm、身長が0.5cmそれぞれ延長した。棘果長は変わらなかった。また体幹の関節可動域では伸展が15°、左側屈が10°拡大した。FFDおよび体幹の関節可動域において実施後のVASが0/10であった。〈BR〉【考察】<BR>本症例において、間接的な徒手牽引療法の即時効果を認めた理由として、脊柱に対して構造的な変化が生じたことが挙げられる。その中でも椎間板においては、大部分が水分より構成されており、親水性があるとされている。また、椎間板にかかる荷重圧の変化により水分の浸潤や脱出が生じ、椎間板の膨張や縮小が起こるといわれている。さらに本症例に対して椎間板にかかる荷重圧が比較的少ない背臥位で実施したことによって、牽引力がより伝達したことが伺える。したがって間接的徒手牽引療法により椎間板に対して構造的な変化をもたらした可能性が考えられる。Weberは機械的牽引を行ったグループと、徒手的牽引を行ったグループに分けて実施したところ、2つのグループともに同等の効果を得たとされており、本症例に対しても間接的徒手牽引療法が有効であった可能性が伺える。〈BR〉【まとめ】<BR>今回腰痛症患者に対して間接的徒手牽引療法を実施した結果、身体機能の変化がみられた。しかし機械的牽引療法の報告は数多くみられるが、徒手牽引療法を行った報告は少ない。また徒手牽引療法の効果を裏付ける科学的根拠も少ないので、今後さらなる検証が必要である。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680505511424
  • NII論文ID
    130005451584
  • DOI
    10.14901/ptkanbloc.31.0_63
  • ISSN
    2187123X
    09169946
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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