右上腕骨近位端骨折に対し人工骨頭置換術が施行された一症例

  • 木村 雅巳
    上尾中央総合病院 リハビリテーション技術科
  • 前田 伸悟
    上尾中央総合病院 リハビリテーション技術科
  • 濱田 健司
    上尾中央総合病院 リハビリテーション技術科
  • 宮村 岳
    上尾中央総合病院 整形外科

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【はじめに】<BR>人工骨頭置換術後において,肩関節の拘縮や縫着した大結節の転位により,屈曲可動域の回復が不良であるという報告は散見される。今回上腕骨近位端骨折を呈し人工骨頭置換術を行った症例に対し,良好な可動域を得ることができたので報告する。<BR>【症例紹介】<BR>基本情報は68歳女性,右利き。現病歴は転落受傷,診断名は右上腕骨近位端骨折(Neerの分類4-part骨折)。手術は受傷21日後に人工骨頭置換術が施行された。棘上筋腱,肩甲下筋腱が付着していた骨片をステムと骨幹部へ縫着した。後療法は,3週間三角巾固定。術翌日より振り子運動のみ許可され,4週目から可動域練習が制限無く許可された。合併症はなく,経過中X線所見において骨片の転位等の異常はなく,術後12週にて退院した。なお,今回の報告に関し,本症例に説明し同意を得た。<BR>【理学療法評価及び治療経過】<BR>術後2日目より理学療法を開始した。治療方針は,振り子運動での屈曲可動域改善と,縫着した骨片の転位の防止とした。初期評価では,可動域は振り子運動にて屈曲60°程度であった。筋緊張は大円筋や大胸筋,小胸筋が亢進しており,振り子運動時肩甲骨の過剰な外転運動と上方回旋不足がみられた。これらに対し肩峰下インピンジメントによる大結節の衝突回避のため肩甲帯の機能練習を,骨片の付着筋による牽引ストレスを生じないよう振り子運動最終域手前でのダイレクトストレッチを行った。4週目の評価では振り子運動での屈曲90°を獲得し,可動域は他動屈曲120°,外旋0°,自動屈曲60°だった。振り子運動での肩甲骨の異常運動はみられなかった。術後12週では,他動屈曲165°,外旋40°,自動屈曲135°だった。<BR>【考察】<BR>人工骨頭置換術後の他動可動域の平均が屈曲129.2±21.4°との報告がある。また良好な可動域獲得のためには,年齢が60歳以下,受傷後2週以内の手術,術後1週での内・外旋可動域練習開始,大結節の転位の防止が重要と報告されている。不良な可動域が予測された本症例が良好な可動域を得られた要因として,早期から振り子運動にて肩甲上腕リズムが改善できたことと,縫着した骨片の転位が起こらなかったことが考えられる。縫着した骨片への負荷として,肩峰下インピンジメントによる大結節の衝突と,骨片の付着筋による牽引ストレスを念頭に理学療法を行った。その結果屈曲可動域制限を最小限に抑えることができ,骨片の安定により回旋筋腱板が機能したことで他動,自動屈曲可動域とも順調に回復した。<BR>【まとめ】<BR>人工骨頭置換術後の良好な屈曲可動域獲得のためには,早期からの振り子運動での肩甲上腕リズムの改善と,大結節の転位の防止が重要と示唆された。

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390282680505521152
  • NII Article ID
    130005451591
  • DOI
    10.14901/ptkanbloc.31.0_80
  • ISSN
    2187123X
    09169946
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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