ハイブリッド分子を活用したメタロチオネインの発現誘導

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  • Induction of metallothionein expression utilizing hybrid molecules

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抄録

心疾患や脳血管疾患などの基礎病変である動脈硬化症の発症と進展には,酸化ストレスや炎症反応が深く関与することが知られている。生体防御因子の一つであるメタロチオネイン(MT)は,重金属の毒性軽減,抗酸化作用および抗炎症作用など多様な作用を示す多機能性タンパク質であることから,血管組織のMT量を恒常的に増加させることができれば血管病変の防御に寄与することが期待される。我々は,血管内皮細胞に対して効率よくMTを誘導合成する低毒性な化合物を見いだすことを目的に,有機—無機ハイブリッド分子ライブラリーを用いて化合物の探索を行い,120化合物の中から高 MT誘導能を有する化合物としてジエチルジチオカルバミン酸銅[Cu(II)(Edtc)2]を見いだした。Cu(II)(Edtc)2は血管壁細胞に対してもMT合成を誘導したが,その程度は血管内皮細胞に比べて弱かった。Cu(II)(Edtc)2が高MT 誘導能を示す処理条件下において,Cu(II)(Edtc)2の配位子あるいは硫酸銅の単独処理ではMTの発現誘導は起こらず,銅を他の金属に置換した化合物や配位子を置換した化合物では誘導効果の消失あるいは低下が認められた。しかもCu(II)(Edtc)2は細胞内へ取り込まれやすい特徴を有することも確認された。さらに,重金属依存性転写因子であるMTF-1を欠損したマウス由来の線維芽細胞を用いた検討において,Cu(II)(Edtc)2によるMT合成誘導にMTF-1が関与することが示された。また,Cu(II)(Edtc)2で前処理した細胞では,カドミウムや亜ヒ酸による細胞毒性が軽減されることを明らかにした。本講演では,血管内皮細胞に対して高い MT発現誘導能を示すCu(II)(Edtc)2の作用とそのメカニズムを紹介し,疾病の治療および予防に向けたハイブリット分子の有用性について考察する。

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