胎生期・新生児期の栄養環境からみたNon Communicative Disease発症リスク

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タイトル別名
  • Developmental environment and non communicative disease

抄録

生活習慣病と言われる糖尿病,本態性高血圧等の成人病が,世界的に増加している。特に経済的発展を遂げつつある発展途上国に著しい。これらの発症機序を解明し予防する事が,社会の発展には不可欠である。この増加を考えNon communicative disease(NCD)という疾患概念が提唱され,対応が模索されている。現在,「受精時や胎生期の子宮内及び乳幼児期の望ましくない環境がエピゲノム変化を起こし,その変化とマイナスの環境要因との相互作用によって成人疾が発症する。成人病はこの2段階を経て発症する。」というDOHaD説(Developmental origins of health and disease)が注目されている。WHOはDOHaD説とNCDの関連性を認めるに至っていないが,DOHaD説は極めて重要であると考える。出生体重の低下は心臓循環器系疾患,糖尿病。脂質異常症,精神発達,本態性高血圧等のリスクが高く,日本は出生体重低下に歯止めのない状況が続いており,次世代の健康が危惧されている。妊娠糖尿病は現在増加しており,出生体重が低かった妊婦は妊娠糖尿病の発症リスクが高い。本疾患は高率に2型糖尿病へ移行するので,糖尿病の増加が想定される。また統合失調症・双極性障害は糖尿病,脂質異常症等の合併率が高く,これらの疾患も胎生期のエピゲノム変化に由来する可能性が示唆されている。 動物の胎内低栄養実験で,脂質代謝,視床下部—下垂体—副腎系,海馬,腎臓等でのエピゲノム解析が進んでいる。しかし種により変化は異なり,人の生体試料の分析が求められている。Line1遺伝子,臍帯のRXRa遺伝子,「オランダの飢餓事件」に曝露された人々でインプリント遺伝子IGF-2,等でのエピゲノム変化が報告されている。これらの変化には,One carbon metebolism関連の栄養素と関連し,ビタミンB群,グリシン等の意義は大きい。葉酸は,二分脊椎症の予防に加えメチル基供与体として機能しているが,妊娠中期以降も血中濃度の低い妊婦が多い。これら視点から,広く妊婦栄養の重要性を,対社会的に周知する緊急性が高い。

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  • CRID
    1390282680522190208
  • NII論文ID
    130004676611
  • DOI
    10.14869/toxpt.40.1.0.1131.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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