発がん性試験における人道的エンドポイントの検討(特に皮下腫瘍の発生について)

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • Deliberations on humane endpoints for carcinogenicity studies (especially about the incidence of subcutaneous tumors)

抄録

動物実験従事者は法令等を遵守し,動物の苦痛を減らすよう努める責務を負う。伴侶動物には鎮痛薬が用いられるが,毒性試験では試験結果に影響を及ぼす懸念があるため,苦痛の軽減は通常安楽死処置によってなされる。そのタイミング(人道的エンドポイント)を適切に判断するために,特に長期間飼育する発がん性試験では動物の状態を的確に把握することが重要である。当研究所では動物実験委員会を中心に動物実験管理体制の整備を進めており,獣医学的ケアプログラムの発効にあたり適切な人道的エンドポイントについて検討している。Wistar Hannover, F344ラット及びICRマウスの発がん性試験に用いられた対照群の切迫殺・死亡動物を対象とし,主な死因疾病の罹患動物における体重の推移と臨床症状の持続期間を調べ,第29回日本毒性病理学会で発表した。その結果,人道的エンドポイントを数日から一週間程度早める必要性が示唆されたため,それを適用した際の死亡率の変化について検討した。下垂体腫瘍,単核細胞性白血病,悪性リンパ腫,排尿障害については,新たな人道的エンドポイントを適用しても死亡率に大きな影響が無いことが判明した。一方,皮下腫瘍の大きさも指標となるため, Wistar Hannover及びF344ラットの皮下腫瘍の大きさから重さを概算し,体重に占める割合(10%を指標)及び腫瘍の重さを引いた体重の推移について検討した。その結果,現行のエンドポイントでは腫瘍の大きさが体重の10%を超える動物が多数みられた。皮下腫瘍を差し引いた体重の推移を調べた結果,従来の切迫殺の時点で国際ガイドラインが推奨する指標である20%の体重減少を示す動物もみられた。従って皮下腫瘍を示す動物にこれらの指標を適用した場合,死亡率がやや増加することが示されたが,これらの動物が必ずしも激しい苦痛を示唆するような症状を示しているとは限らず,動物の状態を総合的に判断して適切な時期で安楽死処置を決定すべきと考えられた。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680522386432
  • NII論文ID
    130004676663
  • DOI
    10.14869/toxpt.40.1.0.2002070.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ