化学物質の短期発がん性スクリーニングの用量設定方法の検討

  • 松本 博士
    一般財団法人化学物質評価研究機構 安全性評価技術研究所
  • 齋藤 文代
    一般財団法人化学物質評価研究機構 安全性評価技術研究所
  • 武吉 正博
    一般財団法人化学物質評価研究機構 安全性評価技術研究所

書誌事項

タイトル別名
  • Improvement of a dose setting method for the short-term chemical carcinogenicity screening method

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説明

我々はこれまでに28日間反復投与したF344ラット肝臓の遺伝子発現量データを用いた短期発がん性予測システム(CARCINOscreen®)を構築した(2009年学術年会)。この開発で用いた学習データの投与量は、既報の発がんを起こす最も低い用量で設定した。発がん性情報がない化合物に本予測法を適用する場合、発がん性物質を正しく検出できるような用量設定が必要である。本研究では、発がん性未知物質を予測するために必要な投与量設定法の確立を目的として、化合物の最大耐用量(MTD)から投与量を設定し、得られたCARCINOscreen®の発がん性予測値と投与量の関係を調べた。<br> 学習データに用いた物質の中から発がん性物質(11化合物)及び非発がん性物質(2化合物)を選定し、MTDを基に公比5で4用量を設定し、F344ラット(5週齢、雄)を用いた28日間反復投与試験を行った。ラットの肝臓における遺伝子発現量をカスタムアレイ(ToxarrayⅢ)で測定した後、CARCINOscreen®による発がん性予測を行った。TD50の文献値が入手できた9種の発がん性物質のうち8化合物の投与量はTD50以上となった。CARCINOscreen®の発がん性予測値は、発がん性物質では4-nitroquinoline-1-oxideを除く10化合物について上位2用量で発がん性ありを示すプラス値となり、用量が高いほどその値は増大したが、それ以下の用量では発がん性なしを示すマイナス値であった。一方、非発がん性物質(2化合物)では全ての用量で予測値がマイナスを示し、用量依存的な予測値の変化はなかった。これらのことから、CARCINOscreen®の発がん性予測値は、発がん物質ではある用量以上で用量依存的にプラス値を示すが、非発がん性物質では最高用量においてもプラス値にはならないことが明らかとなった。今回の検討から、発がん性未知化合物にCARCINOscreen®を適用する場合、投与量はMTDを基に公比5程度で2用量以上を設定すれば十分であると結論できる。

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