ラット腎小体の基本構造に関する三次元形態学的解析:特に血管極と尿管極との位置的関係について

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • Gender differences on 3-D morpholometrical evalulation in rat kidney: localization of vascular and urinary poles

この論文をさがす

抄録

腎臓毒性の理解において重要な事は、腎臓の基本構築を総括的に把握することである。ネフロンが複雑な三次元形態を示すことは周知のことであるが、腎臓の二次元情報を基に毒性学的評価を実施しているのが一般的である。これに対し、腎病変の理解のための基礎情報には教本等に記載されていない多くの不明点があることも事実である。我々は腎臓毒性評価の基盤情報確立を目的として、ラット腎臓の組織学的構造について三次元形態学的な定量解析を行ってきた。微細腎糸球体病変の進行は糸球体の局所から発現する、すなわち腎糸球体病変の理解には腎小体の基本構造との関連性が高いことが仮説できる。本検討では、腎臓の相対重量に有意差を示さない9週齢の健常な雌雄のSD(Slc)ラットを用いた。各腎臓から常法に従い600枚以上の連続組織切片を作製した後、各標本からそれぞれ標的領域の二次元画像をCCD光学顕微鏡画像から抽出してXY-pictorial dataに変換した。次に、各データをRegister 2001 (Vey Tek, Inc., USA)を用いて位置情報を特定しZ-連続性の解析を行った。次いで、Vox Blast 3.1 (Vey Tek, Inc., USA)を用いて、ボーマン嚢のXYZ-pictorial dataを基に三次元再構築を行った。さらに、輸入・輸出細動脈のボーマン嚢侵入部2点、尿管極1点、さらに形態解析からボーマン嚢中心部1点を決定した。決定した細動脈2点を結ぶ直線の中点を血管極と規定した。そして、血管極点・ボーマン嚢中心点・尿管極点を直線で結ぶことで形成される角度を血管・尿管極角度として解析を行った。腎臓単位体積あたりの糸球体数は、雄に比較して雌で有意に高値を示した。これに対し、糸球体体積は雌に比較して雄で有意に高値を示した。さらに、血管・尿管極角度はボーマン嚢の体積と正の相関を示し、その相関係数には雌雄差があることが認められた。本検討ではラット腎臓の腎小体構築に雌雄差があることを明らかにした。本解析は今後、実験的腎臓病変の進行時の雌雄差の理解において重要な基盤的情報となる。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ