tert-ブチルアルコールの生体影響およびETBEとの比較

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  • Comparative study on the health effects of tert-butyl alcohol and ETBE in mice

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tert-ブチルアルコール(TBA)は、バイオ燃料であるエチルターシャリーブチルエーテル(ETBE)の生体内中間代謝物であり、また溶剤型接着剤としても使われている。私達はETBEについて検討した結果、高濃度では肝細胞障害、DNA損傷などを誘発するが、その代謝に関与しているALDH2酵素の遺伝子ノックアウト(KO)マウスではその生体影響はより低い濃度においても現れることが判明された。TBAの体内代謝は不明な部分はあるが、代謝の途中、アルデヒド類が産生されるため、ALDH2酵素がその分解に関与すると推測される。TBAの生体影響についての資料は少ないが、一般的にそのシステム毒性が弱く、また遺伝毒性がないと思われる。今回、TBAの生体影響を評価するとともに、KOを用いて、TBAに対する感受性の変化を検討する。【方法】8週令の雄性C57BL/6J(WT)マウスおよびKOマウスに、TBAを0、5または20 mg/mlを添加した飲用水を連続6週間与えた。臓器、血液を採集し、生化学測定、病理解析および網状赤血球の小核頻度の測定を行った。【結果と考察】腎臓、肺、精巣および精巣上体の体重比に対し、両遺伝タイプのいずれの投与群においても影響はなかった。肝臓体重比は、WTマウスは高用量群のみで、KOマウスは低用量と高用量群の両方で有意に増大した。血液系では赤血球数、ヘモグロビン濃度およびヘマトクリット値の上昇は、肝肥大と同じ群で検出された。小核頻度の変化はWTマウスでは検出されなかったが、KOマウスではバックグランド値はWTより高く、両投与群において対照群より増加した。このようにTBAはALDH2活性欠損マウスにおいてより低濃度で肝障害やDNA損傷を誘発することができ、この酵素はTBAの代謝や毒性発現に関与している可能性が示唆された。また、これらの生体影響はETBEと類似しており、TBAがETBEの生体影響の少なくとも一部に係わっていることも示唆された。

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