AMPKの活性化は亜ヒ酸毒性を増強する

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  • Activation of AMPK enhances arsenite toxicity

抄録

【目的】現在、南アジアを含む世界各地で地下水のヒ素汚染による地域住民の健康障害が問題となっている。しかしながら、ヒ素の毒性発現機構には不明な点が多く、その解明が求められている。我々は、真核細胞生物モデルとして有用な出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)を用いて、ヒ素の毒性発現に関わる分子機構の解明に取り組んできた。これまでに、欠損によって出芽酵母の亜ヒ酸感受性を上昇させるタンパク質として1 型プロテインホスファターゼ複合体(PP1)を見出している。また、PP1欠損による亜ヒ酸毒性増強に酵母AMP-activated protein kinase(AMPK)である Snf1 が関与していることも明らかにしている。本研究では、酵母およびヒト培養細胞を用いて亜ヒ酸毒性とAMPKとの関係について検討した。<br>【方法】ヒト胎児腎由来細胞(HEK293細胞)を亜ヒ酸存在下で培養後、Cell counting kit-8を用いて細胞生存率を測定した。AMPKのリン酸化は抗phospho-AMPK抗体を用いたWestern blottingによって検出した。<br>【結果・考察】Snf1の高発現は酵母の亜ヒ酸に対する感受性を亢進させた。一方、キナーゼ活性が低下したSnf1変異体(K84RまたはT210A)の高発現は亜ヒ酸感受性にほとんど影響を与えなかった。したがって、Snf1のキナーゼ活性の亢進が亜ヒ酸毒性を増強させると考えられる。次にAMPK活性化剤AICA-ribosideでHEK293細胞を前処理したところ、AMPKのリン酸化および亜ヒ酸感受性が亢進することが確認された。また、PP1特異的阻害剤であるtautomycin前処理によってもAMPKのリン酸化および亜ヒ酸感受性の亢進が観察された。以上のことから、酵母のみならずヒト細胞においてもAMPKの活性化が亜ヒ酸毒性を増強することが示唆された。また、亜ヒ酸処理によってAMPKのリン酸化の亢進が確認されたことから、亜ヒ酸がAMPKの活性化を介して自身の毒性を増強している可能性も考えられる。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680523558400
  • NII論文ID
    130005260672
  • DOI
    10.14869/toxpt.43.1.0_p-196
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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