Introduction:薬物性肝障害
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- 寺西 宗広
- 第一三共株式会社 安全性研究所
書誌事項
- タイトル別名
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- Introduction: Drug-induced liver injury
抄録
肝臓はもっとも毒性標的となる可能性の高い器官の一つであり、肝毒性は医薬品の開発中止、黒枠警告、販売中止に至る主要な原因の一つである。このような肝毒性への懸念から、米欧当局より肝毒性に関するガイダンス・ガイドラインが出されている。肝毒性はどの研究開発段階でも発現し得るが、肝毒性のポテンシャルを可能な限り早期に評価し、安全域、回復性、モニタリングマーカー、種差、類薬比較、リスク・ベネフィット分析等を通じて、go/no-goを決定することが重要である。しかし、被験者数の限界もあり、市販後に初めて検出されるような特異体質性薬物毒性(IDT)は、通常の毒性試験では予測が困難で、臨床試験段階で少数例に発現したとしても薬物との関連性を認識するのが困難である。一方で、IDTで警告、販売中止に至るケースが多いため、IDTを回避する方法を見出すことは患者、医療者、当局、製薬企業のいずれにとっても重要であり、試行錯誤的な模索検討が続いている。化学的に反応性の高い薬物(反応性代謝物)は肝細胞内のタンパク、核酸に共有結合し細胞の機能障害、ストレス、細胞死、免疫反応を惹起しIDTを発現する可能性が考えられている。 このIDT発現機序の詳細は不明ではあるが、GSHトラッピングアッセイ、CYP阻害アッセイ、共有結合量測定等を段階的に実施し、反応性代謝物の生成を低く抑えたり、投与用量自身を低く抑えたりすることはIDT回避のための賢明な戦略と考えられる。肝毒性を鋭敏に検出するためmiRNAなど新規バイオマーカーやオミクスの活用も検討されているが、バリデーションされている必要があり、依然ALT、AST、T.BIL、ALP等従来の臨床検査パラメータ、病理組織学的検査を基に総合的に検討することが肝毒性検出には重要である。その一方で特定のタイプのIDTに関与するヒト遺伝子多型の知見も徐々にではあるが得られるようになってきて、IDT回避のツールとなる可能性に期待が高まってきている。
収録刊行物
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- 日本毒性学会学術年会
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日本毒性学会学術年会 39.1 (0), S9-1-, 2012
日本毒性学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680523963392
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- NII論文ID
- 130005009016
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可