化粧品原料による胆汁うっ滞型肝障害発症リスク予測法の検証

書誌事項

タイトル別名
  • Application of predicting model for cholestatic liver injury in cosmetic ingredients

説明

[目的] 薬剤性胆汁うっ滞型肝障害(胆汁うっ滞型DILI)は、肝細胞内からの胆汁酸排泄阻害に起因する。これまでに我々はサンドイッチ培養肝細胞(SCH)を用いた胆汁酸蓄積に伴う肝細胞毒性評価法を確立し、臨床での胆汁うっ滞型DILI発症リスク予測に有用であることを示してきた。一方で化粧品については、確立された全身毒性試験法が存在しないことが問題となっている。そこで本評価法が化粧品の全身毒性リスク評価に必要な複数試験系の一端を担うことが期待できると考えた。本研究では、医薬品で構築したリスク評価法とその判定基準を臨床情報が無い化粧品原料に適用した場合に、正しく評価可能となるかどうか検証した。<br>[方法] (1)PMDA副作用自発報告データベースを参照し、DILI様式として胆汁うっ滞型の割合の大小を広く網羅する22医薬品、及び(2)2化粧品原料(glycerol及びL-ascorbic acid)をそれぞれ被験化合物として選択した。医薬品についてはInterview FormよりDILIの臨床診断マーカー (alkaline phosphatase (ALP)、transaminases) の上昇頻度を抽出した。ヒトSCHに被験化合物50 µM (cyclosporine Aのみ10 µM)とヒト血清中胆汁酸(150倍濃度)を24時間曝露し、細胞毒性を評価した。<br>[結果、考察] 各被験薬物について臨床診断マーカー上昇頻度1%を境に、DILI高リスク群・低リスク群に分類した。ヒトSCHにおける各薬物の胆汁酸存在下での細胞毒性についてReceiver Operating Characteristic解析を行った結果、至適Cutoff値は、それぞれ6.8% (ALP)、3.6% (transaminases)と得られた。この時、ALP上昇リスクは感度60.0%、特異度83.3%、transaminases上昇リスクは感度62.5%、特異度 83.3%と、何れの臨床診断マーカー上昇頻度についても良好なリスク判定が可能であった。今回検討した化粧品原料については、これらCutoff値を用いることで何れも陰性と判定された。以上より、医薬品で算出されたCutoff値を用いることでDILI陽性薬物と、これら化粧品原料との分離は可能であり、本予測法が化粧品原料に対しても適用できる可能性が示された。今後はより多くの化粧品原料について同様の評価を行い、予測法の妥当性と頑健性を検証していく必要がある。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680523966976
  • NII論文ID
    130005260588
  • DOI
    10.14869/toxpt.43.1.0_p-116
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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