民間療法の実状(種類と傾向)

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抄録

民間療法とは、医療機関で指示された治療以外に、患者自身が糖尿病に良いと考えて自由選択したすべての行為と考えられるが、最近の社会状況の変化によって、いわゆる民間療法と呼ばれるものの定義・位置づけは次第に難しくなってきている。坪井は2000年、北海道から沖縄まで29の医療機関でのアンケートによる「民間療法の実態調査」(5221名)では、糖尿病に対する民間療法体験率は現在:19%、過去:23%と報告している。さらに民間療法を行った動機については、家族、知人の勧めが62%、新聞、雑誌、テレビ等が29%となっている。また、宮川は、西東京地域の8医療機関に延べ348名の糖尿病患者での民間療法のアンケートによれば、使用した動機は、1.血糖降下作用を期待(38.7%)、以下 2.健康増進 3.糖尿病を改善させる 4.合併症の症状を緩和 5.苦しい食事療法や薬物療法から逃れたい(7.6%)と報告している。そして、50%以上は使用期間1ヶ月から12ヵ月と短く、52.5%が効果なしと判断し、比較的短期間に中止していた。しかし35%の患者が一時的にしろ効果があったという結果であった。陣内は、3つの医療機関2596例でのアンケート調査で、実施者の年代分布では40歳から60歳:26.3%、61歳以上では22.6%。さらに民間療法で使った費用は、月額1000円から5000円で154例(40%)、次いで1万円以上が114例(29.6%)。20万円から50万円も支払っている例も数件あったとしている。さて、民間療法の種類は100種類以上であるが、あいそ内科での550人の糖尿病患者の民間療法に関するアンケート調査では6種類以上の民間療法を現在、過去に次々行っている人は約25%も存在し、中には20種類もの民間療法を次々に行っている患者もいた。使用例数の多い10項目として、クロレラ、カイアポイモ、ギムネマ茶、タラの木、イオン水、プルーン、ローヤルゼリー、グァバ茶、ドクダミ茶、酢(大豆とか卵)であった。民間療法の最近の傾向としては、日本古来より民間に伝承されたものや漢方薬に加えて、東南アジアや南アフリカなどの熱帯地方の長寿地域とされる所にある植物などを原料としたものが多い。民間療法の背景にはさまざまな要因が潜在しており、患者教育も一筋縄ではいかない。医療チームは、民間療法の克服のためにきめ細かなチーム医療を行う必要があろう。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680523975168
  • NII論文ID
    130006952959
  • DOI
    10.11213/aexz.39.0.78.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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