一酸化炭素中毒に対する高気圧酸素治療の現状と問題点
書誌事項
- タイトル別名
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- Hyperbaric oxygen therapy on carbon monoxide poisoning
説明
一酸化炭素中毒(CO中毒と略)は、我が国における中毒死の死因第1位を占めており、救急医療の重要な疾患の一つである。COは、ヘム蛋白との親和性が酸素より高く、容易に結合する。COがヘモグロビンと結合し酸化ヘモグロビンが低下すると、酸素供給量が低下し、組織低酸素症が結果する。また、COがミオグロビンと結合すると、心筋・骨格筋の低酸素症を起こす。更に、チトクローム系酵素と結合すると、酸素の利用障害を起こす。CO中毒の急性期の症状は、組織低酸素症および酸素利用障害の結果であり、中枢神経障害、心筋障害、肝・腎機能障害、横紋筋融解等を呈する。<br> CO中毒の最大の問題点は、遅発性のCO中毒(DNS; delayed neuropsychiatric sequelae、delayed encephalopathy)である。これは、急性症状の回復後2日~4週間を経て、高次機能・認知機能の障害を主とする神経精神症状を起こすことである。その病態は、COの細胞毒性により遅発性に進行する脱髄性の白質病変の可能性が高く、免疫機序の関与が報告されている。<br> CO中毒に対する治療として、COの速やかな洗い出しと組織の酸素化(酸素代謝の正常化)を目的として、高気圧酸素治療(HBO:hyperbaric oxygen therapy)が行われている。しかしながら、急性CO中毒に対するHBOの有効性に関する国際的な論争は決着しておらず、Cochrane Reviewにおいて、CO中毒治療におけるHBOの役割を明確にするために、更なる多施設研究が求められている。<br> 当シンポジウムでは、遅発性のCO中毒に示される病態を整理するとともに、HBOの有効性に関する研究の現段階、およびCO中毒に対するHBOの適応と治療効果の評価について述べる。
収録刊行物
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- 日本毒性学会学術年会
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日本毒性学会学術年会 43.1 (0), S18-5-, 2016
日本毒性学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680524310784
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- NII論文ID
- 130005260872
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可