ピモベンダンは代償性心不全に対して予防効果を持つが末期心不全に対して突然死のリスクを増加させる

書誌事項

タイトル別名
  • Pimobendan has a preventive effect on compensated heart failure but increases the risk of sudden cardiac death at end-stage heart failure

説明

心筋トロポニンT欠失突然変異ΔK210は、心筋ミオフィラメントのCa感受性低下をもたらすことによって拡張型心筋症(DCM)を引き起こす。この突然変異を内在遺伝子に導入したBALB/c背景ノックインマウスは、大半が進行性の心不全により死亡する。本研究では、このDCMモデルマウスを用いて、代償期と代償破綻後の心不全に対するCa感受性増強薬ピモベンダンの治療効果を検討した。左室駆出率(EF)が35%以上の4週齢 DCMマウスを代償期心不全群(代償期群)、EFが 35%以下の6-9週齢 DCMマウスを末期心不全群(末期群)に分類し、10 mg/kg(低用量)または100 mg/kg(高用量)のピモベンダンを1日1回経口投与した。代償期群では、ピモベンダン投与により用量依存性に生命予後が改善された。一方末期群では、代償期群と同様に生命予後改善効果が認められたが、高用量ピモベンダン投与により、突然死が誘発され、その効果は著しく減少した。正常野生型マウスの単離心筋細胞にピモベンダン1, 3, 10 μMを添加した際の電気刺激によるサルコメア長短縮および細胞質内Caの一過性上昇(Caトランジェント)を測定した結果は、1 μMではどちらも変化は認められなかったが、3 μMではピモベンダンのCa増強作用による収縮機能の増加が観察された。10 μMではPDE阻害作用によるCaトランジェントの増強とそれに伴う収縮機能のさらなる増加が観察された。一方末期心不全群では10 μMピモベンダンにより誘発活動を伴う弛緩時細胞質Ca濃度の著しい増加が観察された。以上より、Ca感受性増強薬ピモベンダンは、心筋トロポニンTΔK210突然変異による遺伝性DCMに対して治療効果を示すが、代償期では高用量が適しているのに対し、代償破綻後では致死的不整脈の発生リスクが増えることから至適投与量は異なる可能性が考えられる。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680524423552
  • NII論文ID
    130005468785
  • DOI
    10.14869/toxpt.41.1.0_p-28
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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