GLP試験でみられた毒性についてヒトへの外挿性を検討した事例の紹介

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タイトル別名
  • Case study: Human relevancy and mode of action of toxic findings observed in GLP toxicity studies

抄録

医薬品候補化合物の毒性試験で毒性所見がみられた場合でも、無毒性量と臨床用量との間に十分な安全域があれば開発は可能である。たとえ毒性試験で十分な安全域が得られない場合でも、臨床で毒性マーカーをモニターし、副作用を事前に予見できる場合には臨床試験が実施可能である。また、毒性機作研究の結果から、ヒトへの外挿性が否定できる場合には安全域が確保できなくても開発が可能となる場合がある。一般に、糖尿病、高血圧症、ホルモン依存性がんあるいは消化器関連疾患などの治療薬には十分な安全域が求められる。一方、中枢関連疾患、心不全、慢性閉塞性肺疾患、がんあるいは肥満症などの治療薬では有効性と安全性とのバランスが考慮されるため、それらの安全域についてはケースバイケースで議論される。薬理作用により病気の治癒や症状緩和といった利益が大きい場合には、安全性の懸念はある程度許容されることがある。許容されるリスクの大きさは毒性の性質や重篤度だけでは無く、治療対象となる疾患の重篤度や代替治療法の有無などとの比較が重要であり、疾患そのものに対する知識と理解が必要である。<br>抗肥満薬GLP-1作動薬でみられたげっ歯類の甲状腺c細胞の過形成・腺腫、ペプチド性抗肥満薬GLP-1/GIP作動薬の小核誘発作用、プロトンポンプ阻害薬などの酸分泌抑制薬によりげっ歯類でみられた胃カルチノイド腫瘍及び精巣間細胞腫、ACE阻害薬・アンジオテンシンII受容体拮抗薬のげっ歯類でみられる体重減少、胃潰瘍あるいは貧血、LH-RH作動薬などの前立腺がん治療薬でみられたげっ歯類の精巣壊死、抗糖尿病薬α-グルコシダーゼ阻害薬の腎細胞腫瘍など、最近の知見や当社における経験も含めて紹介する。本シンポジウムでは各種領域の治療薬での安全域の考え方及び毒性発現機作と種差に基づくヒトへの外挿性評価の重要性について議論したい。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680525142528
  • NII論文ID
    130006582334
  • DOI
    10.14869/toxpt.44.1.0_s9-5
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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