食道組織への亜ヒ酸の蓄積性の検討

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  • Examination of arsenic accumulation in the esophageal tissue

抄録

【目的】バングラデシュなどの東アジア地域では慢性的なヒ素曝露が原因で多臓器において癌が発生する. しかしながらその機序に関しての詳細な検討は進んでいない. 一方, サルを用いた研究により, 亜ヒ酸は皮膚, 肝臓のみならず食道に蓄積することが明らかとなっている. 本研究では, 亜ヒ酸の食道に対する影響を検討することを目的として, マウスおよび食道由来不死化細胞を用い, ヒ素による毒性発現について検討を行った. <br>【方法】マウス:C57BL6J(♂, 6週齢). 亜ヒ酸投与:kg体重あたり亜ヒ酸1 or 5 mgを腹腔内に投与(3日, 7日). ヒ素蓄積量:ICP-MS. 組織中GSH量: DTNBを用いて定量. タンパク質発現:ウエスタンブロット法. mRNA発現: 半定量PCRおよびReal-time qPCR. 細胞:ヒト食道不死化Het1A細胞, ヒト肝癌HepG2細胞.<br>【結果】マウス腹腔内に亜ヒ酸を連続投与した後の食道, 肝臓, 肺, 腎臓, 心臓を採取しヒ素蓄積量を検討したところ, 他臓器と比較して食道においてヒ素が高く蓄性されていた. ヒ素が食道に蓄性する原因を明らかにするために, 亜ヒ酸の取り込みに関わるアクアグリセロポリン(AQP)の発現レベルを検討したところ, 食道ではAQP3が強く発現していた. 次に亜ヒ酸の代謝・排泄に関わるグルタチオン(GSH)量およびGSH合成の律速酵素であるγ-グルタミルシステイン合成酵素(GCL), 多剤耐性タンパク質-2(MRP2)の発現量を検討したところ, 食道におけるGSH量およびGCL, MRP2発現レベルは肝臓と比較して著しく低かった. 食道におけるヒ素による毒性発現を詳細に検討するために培養Het1A細胞を用いて検討した. その結果, 亜ヒ酸に対するHet1A細胞の感受性はヒト肝癌HepG2細胞と比較して著しく高いことが明らかとなり, またGCL発現レベルはHepG2と比較して低いことが明らかとなった. <br>【考察】以上の結果から, 亜ヒ酸は食道に蓄積されやすく, その一因として食道におけるGSH量およびGCL, MRP2発現レベルの低さの関与が示唆された.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680525396352
  • NII論文ID
    130005468666
  • DOI
    10.14869/toxpt.41.1.0_p-185
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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