カドミウムとヒ素による農作物汚染とその対策
書誌事項
- タイトル別名
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- Cadmium and arsenic contamination in crops and countermeasures
抄録
日本人は、食品から取るカドミウム(Cd)の約4割をコメから摂取します。農林水産省の実態調査においてCdの国際基準値を超過した割合が高い畑作物があります。また、日本では過去の鉱山開発の影響で、Cd濃度が高いコメが生産される地域が未だ存在します。そこで、低コストで実用的な農耕地土壌修復技術(土壌洗浄、ファイトレメディエーション)を開発しました。土壌洗浄は水田に塩化鉄溶液を投入して土壌に吸着している Cd を水中に溶出させ、排水処理装置でCd を回収します。ファイトレメディエーションではCd をよく吸収するイネ品種を、Cd が吸収されやすい条件で2~3年栽培してCd を回収します。土壌を浄化することでコメだけでなく、ダイズ等の転換畑作物のCd吸収低減も可能になります。<br>さらに、Cdをほとんど吸収しないイネ品種を世界で初めて開発し、「コシヒカリ環1号」の名前で品種登録出願をしました(2013)。現在、日本各地で栽培実証試験が行われています。遺伝解析の結果、「OsNRAMP5」という重金属輸送に関わる遺伝子が変異し、根のCd吸収が抑制されていることがわかり、この遺伝子を簡単に識別できるDNAマーカーを開発しました。このDNAマーカーを用いて、農林水産省の研究機関や県の農業試験場と共同で、各県の有力品種や有望な系統に、低Cd遺伝子を導入する取り組みが進行中です(65品種・系統)。<br>また、日本人が食品を通じて摂取するヒ素に関して、農産物の中ではコメからの摂取が比較的多い傾向にあることが知られています。コメに含まれるCdの量を減らすためには、稲の穂が出る前後の時期に水田に水を張ること(湛水管理)が有効ですが、湛水管理はコメのヒ素を増やす可能性があります。このため、水田の水管理、資材施用、「コシヒカリ環1号」を利用して、コメのCdとヒ素を同時に低減する栽培技術の開発を進めています。
収録刊行物
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- 日本毒性学会学術年会
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日本毒性学会学術年会 41.1 (0), S2-5-, 2014
日本毒性学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680525447168
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- NII論文ID
- 130005468872
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可