内因性親電子シグナル経路と活性イオウ分子のクロストークと環境毒性学

DOI
  • 居原 秀
    大阪府立大学院理学系研究科生物科学専攻

書誌事項

タイトル別名
  • Crosstalk between endogenous electrophile-signaling and reactive sulfur species; Novel insights into environmental toxicology

抄録

環境中の化学物質が生物に及ぼす影響を対象とする環境毒性学において、毒性発現および解毒メカニズムを理解することは重要である。これまでに、活性酸素種(ROS)が関与した毒性発現および、抗酸化物質による解毒メカニズムについて多数報告されてきている。一方、ROSがその親電子性を二次分子に伝達して作動する親電子シグナル経路が明らかとなり、環境中毒物の毒性発現との関連が注目されるようになってきた。親電子シグナルの二次分子として同定された8-ニトロ-cGMPは、レドックスセンサータンパク質のシステイン残基のチオール基を親電子修飾(S-グアニル化)することにより、親電子シグナルを活性化させ、細胞毒性が惹起される。実際に、環境中の毒物であるメチル水銀が、神経細胞で8ニトロcGMPの産生を促進し、低分子Gタンパク質H-RasをS-グアニル化して下流のシグナルを活性化させ、神経毒性を発現する。また最近、親電子シグナルの制御因子として、システインのチオール基に過剰のイオウ原子が付加したパーサルファイドが同定され、高い求核性をもつため“活性イオウ分子”と命名された。活性イオウ分子は、強力な抗酸化能、親電子シグナル制御活性を有するので、効率よくROSの親電子性は消去することによって毒性を軽減し、メチル水銀などの親電子性毒物とイオウ付加反応や二量体形成することで、毒物の親電子性を減弱させ解毒している。さらに、活性イオウ分子は、8-ニトロ-cGMPのような内因性の親電子性二次分子と反応し、イオウ付加体(8-メルカプト-cGMP)を形成することによって親電子シグナルを調節し、その下流にある細胞毒性の制御を行っている。このように、内因性親電子シグナルと活性イオウ分子のクロストークの全容が明らかになりつつあり、環境毒性学に新たな知見を加えることになると考えられる。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680525636736
  • NII論文ID
    130006582303
  • DOI
    10.14869/toxpt.44.1.0_s10-4
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ