魚類におけるシトクロムP450の発現制御機構と代謝特性

DOI
  • 久保田 彰
    帯広畜産大学動物・食品検査診断センター毒性解析分野 ウッズホール海洋研究所生物学部門
  • John J STEGEMAN
    ウッズホール海洋研究所生物学部門

書誌事項

タイトル別名
  • Regulation and metabolic property of cytochrome P450 in fish

抄録

魚類は産業的価値が高く毒性試験公定法の対象生物でもあることから、環境化学物質の汚染実態や毒性影響に関する研究は古くから実施されてきた。しかしながら、魚類における化学物質の生体影響とその作用機序に関する知見は現在でも十分とは言えない。水圏は環境化学物質の溜まり場として機能することから、魚類の生体異物応答機構や異物代謝能を明らかにすることは生態毒性学的にも重要な課題である。<br>哺乳類では、環境化学物質を含む多様な生体異物のセンサーとしてaryl hydrocarbon receptor (AHR) やconstitutive androstane receptor (CAR)、pregnane X receptor (PXR) が重要な役割を担い、シトクロムP450 1A/2B/3A (CYP1A/2B/3A) などの異物代謝酵素の発現調節に関与している。他方、CYP1/2/3分子種はステロイドホルモンなど生理学的に重要な内在性物質の代謝にも関与する。このため、環境化学物質によるAHR/CAR/PXRの活性化とCYP1/2/3分子種の誘導は、生体内ホルモンレベルの変化をとおして内分泌撹乱作用を引き起こす可能性がある。<br>著者らは、環境毒性脊椎動物モデルとして近年その利用が進んでいるゼブラフィッシュに着目し、これまでAHRやPXRを起点とした生体異物応答機構の解明や標的CYP遺伝子の機能解析を推進してきた。こうした研究により、ゼブラフィッシュの生体異物応答にAHRやPXRが重要な役割を担うとともに、両受容体シグナル伝達にクロストークが生じていることを明らかにした。本シンポジウムでは、我々の近年の研究成果を中心に、ゼブラフィッシュと他魚種あるいは哺乳動物との種差という観点からCYPの発現制御機構や代謝特性の多様性について紹介したい。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680525730816
  • NII論文ID
    130005483717
  • DOI
    10.14869/toxpt.42.1.0_s9-5
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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