国内の動向:臨床試料を用いた安全性バイオマーカー探索と検証 ―セーフティートランスレーションにおける課題―
書誌事項
- タイトル別名
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- Exploration and validation of safety biomarkers using clinical samples
抄録
医薬品の安全性に関する評価は、その開発や製造販売後適正使用において重要な問題である。副作用等に関し、生体中の客観的測定指標となるバイオマーカーの利用は、医薬品開発時の早期安全性評価や医薬品リスク管理計画におけるリスク最小化策の一つとして有用である。<br>安全性マーカー探索として、ゲノム解析が多くなされている。なかでも、医薬品の解毒代謝に関わる薬物代謝酵素、体内分布に関わるトランスポーターの知見は既に多くの蓄積があり、例えばトログリタゾンによる肝障害では、グルタチオン転移酵素の全欠損型多型との関連が報告されている。さらには特異体質性と言われてきた重篤副作用(肝障害等)についても、ヒト白血球抗原(HLA)タイプを中心に関連が報告されており、その一部は添付文書に反映されている。しかし、これら特定のゲノム情報との関連は、医薬品特異的であることが多く、また症例が集積する臨床試験後期から製造販売後での後向きの探索が中心である。<br>一方、マイクロRNA、タンパク質、内在性代謝物については、特定の臓器に多く存在する場合や組織障害により積極的に体液中に放出される場合は、病態に依存した医薬品非特異的なマーカーとなりえ、これら分子群のオミックス解析手法の進展とも相まって、注目を集めている。特に解析が進んでいる分子としては、肝障害における血液中miRNA(miR-122など)、腎障害における尿中タンパク質(Kim-1など)、心障害における血中タンパク質(トロポニンなど)がある。一方で、これらの分子を対象とする場合は、試料品質の確保が重要であると共に、食事、喫煙習慣、年齢、日内変動など、そのレベルに、副作用以外で個人差をもたらす要因に注意が必要である。<br>本講演では、安全性マーカー研究の現状を概説すると共に、臨床試料を用いて探索・検証する際の留意点、さらには臨床応用に関する課題や海外での取組について述べたい。
収録刊行物
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- 日本毒性学会学術年会
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日本毒性学会学術年会 42.1 (0), S10-4-, 2015
日本毒性学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680526249216
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- NII論文ID
- 130005483678
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可