妊娠期ヒ素曝露によるF1及びF2世代のC3Hマウス肝細胞の接着能低下に関するメカニズム

DOI
  • 鈴木 武博
    国立環境研究所 環境リスク・健康研究センター
  • 野原 恵子
    国立環境研究所 環境リスク・健康研究センター

書誌事項

タイトル別名
  • The impaired adhesive ability of hepatocytes of the F1 and F2 generation of gestationally arsenite exposed C3H mice

抄録

【背景・目的】有害物質の影響を受けやすいと考えられる妊娠期や乳幼児期における環境化学物質曝露は、様々な後発的影響を誘導することが懸念されている。近年、疫学研究においても、C3Hマウスを用いた動物実験においても、妊娠期にヒ素曝露を受けると生まれたF1世代で肝腫瘍発症率が増加することが報告された。我々の研究で、C3HマウスのF2世代においてもヒ素曝露群で肝腫瘍発症率が増加し、妊娠期ヒ素曝露の影響はF1及びF2世代でも現れることが明らかになった。本研究では、これらの現象の解明に向けて、F1及びF2世代の肝臓に着目し、肝臓から単離した肝細胞でフェノタイプ及びメカニズムを検討した。<br>【実験】C3HマウスF0の妊娠8~10日に85 ppmの亜ヒ酸ナトリウムを飲水投与し、産まれたF1及びF2世代74週齢の雄の肝臓からコラゲナーゼ灌流により肝細胞を単離した。得られた肝細胞をコラーゲンコートdishに播種し、37℃で培養した。4時間後にdish内からランダムに10箇所選び、dishに接着している細胞数を測定した。また、播種前のF1及びF2世代の肝細胞からタンパク質を調製し、リン酸化状態を網羅的に解析した。<br>【結果・考察】F1世代のヒ素曝露群では、コラーゲンコートdishに接着する肝細胞数が対照群と比較して有意に減少した。また、F2世代においても接着細胞数の有意な減少が観測された。したがって、妊娠期ヒ素曝露の影響はF1及びF2世代に現れていることが明らかになった。F1及びF2世代の肝細胞から調製したタンパク質のリン酸化状態を網羅的に解析した結果、炎症に伴う上皮細胞の間葉細胞系への変換にかかわるタンパク質のリン酸化がヒ素曝露群で亢進していることがわかった。今後、肝細胞でみられた影響が肝腫瘍発症率の増加に関与するかどうか検討する。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680526322048
  • NII論文ID
    130006581933
  • DOI
    10.14869/toxpt.44.1.0_p-121
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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