カドミウムによる細胞浸潤能の亢進における標的遺伝子としてのアポリポプロテインEの確立

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  • Identification of apolipoprotein E as a target gene in cadmium-mediated cancer cell invasion

抄録

【目的】カドミウム(Cd)は国際がん研究機関によりヒトに対して発がん性を示す物質(グループ1)に分類されている。Cdの生物学的半減期は約20年と極めて長く、Cdが体内に蓄積し、発がん作用などの悪影響を及ぼすことが懸念されている。しかしながら、Cdによる発がん機構は依然として不明な部分が多い。そこで、本研究ではCd曝露による細胞浸潤能の亢進に着目し、細胞浸潤能の亢進機構の解明を目指した。<br>【方法】ラット肝 TRL 1215 細胞(前がん細胞モデル)に2.5 µMのCdを長期曝露したのち、以下の検討を行った。細胞増殖アッセイ、細胞浸潤アッセイ、ゼラチンザイモグラフィー、DNAマイクロアレイ解析、real-time RT-PCR、およびウエスタンブロット分析を行った。<br>【結果および考察】Cd曝露により悪性形質転換した細胞では細胞増殖能が亢進し、さらにはマトリックスメタロプロテアーゼ2の活性増加とともに、細胞浸潤能も亢進していた。アポリポプロテインE (ApoE)のmRNAおよびタンパク質の発現がコントロール細胞と比較して顕著に低下していた。Cd長期曝露した細胞をDNA脱メチル化剤である5-aza-2’-deoxycytidine (5aza-dC)で処理することにより、ApoEの発現がコントロール細胞レベルまで回復し、さらにはCd曝露によるがん細胞浸潤の抑制も確認された。これまでApoEは脂質代謝に注目されてきたが、近年、ApoEの新たな生理機能として細胞浸潤を抑制することが報告されており(Cell, 151: 1068–1082, 2012)、本研究結果を支持していた。ApoEはliver X receptor α(LXRα)により転写制御されることが知られているが、LXRアゴニスト(GW3965)処理ではApoEの発現に影響がなかった。一方、ApoEと同様にLXRαにより転写制御される他の遺伝子については、GW3965処理により発現が増加した。以上、本研究により、Cdによるがん細胞浸潤能亢進の標的遺伝子としてApoEを見いだされ、その機構としてApoEの発現調節領域の高メチル化によるApoEの発現抑制を介していることが示唆された。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680526393472
  • NII論文ID
    130006582183
  • DOI
    10.14869/toxpt.44.1.0_p-9
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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