COSMO-RS法による空気-鼻粘液分配係数の予測

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  • Prediction of the air-nasal mucus partition coefficients by the COSMO-RS method

抄録

【目的】 鼻から喉頭に至る上気道、気管および気管支は吸入された化学物質を肺へ送達する「経路」であると同時に空気中の化学物質の主要な「標的組織」でもある。例えば、シックハウス症候群の原因と考えられる揮発性有機化合物 (VOCs) の多くは鼻粘膜に対する刺激性が認められている。鼻腔におけるこれらのVOCsの吸収には、空気と鼻粘液との間の分配係数 (Kair:mucus) が大きな影響を及ぼすことが知られている。そこで、本研究では室内空気中のVOCsの曝露濃度を評価する際に必要なKair:mucus値の推定方法を確立する目的で、Kair:mucusの実測値が入手可能なLimoneneやBenzaldehyde などVOCs 12物質について量子化学計算に基づく物理化学的パラメーターの推算を行い、予測値と実測値の比較を行った。<br>【方法】 CONFLEX 7により得られた各化合物の安定配座について密度汎関数法による量子化学計算を行い、分子表面の電荷分布データ (COSMOファイル) を求めた。無次元のHenry定数と粘液:水分配係数 (Kmucus:water) はCOSMOthermを用いて推算した。鼻粘液は外層粘液 (ゲル層) をMucinの構成単糖であるN-Acetylneuraminic AcidとGalactoseが結合した二糖として、繊毛間液 (漿液性のゾル層) を水としてモデル化した。<br>【結果と考察】 12 VOCsについてLogKair:mucusの実験値と推定値を比較した結果、RMS Errorは0.808、R2は0.774であった。両者の差異が比較的大きいVOCsはGeraniol、Diphenyl OxideおよびCarvoneの3化合物であり、これらを除く9 VOCsの解析ではRMS Error 0.323、R2 0.959という良好な推定結果が得られた。本研究では密度汎関数法による量子化学計算とCOSMO-RS法による物理化学的パラメーターの推定により、鼻粘膜におけるVOCsの分配を比較的高精度に推定できることを明らかにした。本法と数値流体学解析を組合せることによって室内空気中VOCsの鼻腔内挙動の詳細な予測が可能になるものと期待される。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680526779264
  • NII論文ID
    130005483511
  • DOI
    10.14869/toxpt.42.1.0_p-35
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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