テトラブロモビスフェノールAによる脂肪前駆細胞3T3-L1の分化促進とヒストンH3K9のメチル化修飾

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  • Histon H3 lysine 9 methylation in 3T3-L1 adipocytes differentiated by tetrabromobisphenol A

抄録

テトラブロモビスフェノールA(TeBBPA)は、安全性の高い臭素系難燃剤として様々な工業製品で使用されているが、母乳から検出されていることから乳児期曝露による生体影響が危惧されている。実際、脂肪前駆細胞3T3-L1細胞において、脂肪細胞への分化に関わる転写因子PPARγやC/EBPα、更にはPPARγの下流にある脱共役タンパク質UCP2などの発現を誘導することから、肥満のリスク要因となる可能性が考えられる。一方、未分化な3T3-L1細胞では、脂肪分化関連遺伝子の発現はヒストンのメチル化のような、いわゆるエピジェネティックな機構により抑制されることで未分化状態を維持している。特に、ヒストンH3のLys9残基のメチル化については、メチル化酵素Setdb1や脱メチル化酵素Jmjd2bのノックダウンによって、分化が促進あるいは抑制されることから、Lys9残基のメチル化の減少が脂肪細胞分化に関わっているとされており、TeBBPAも、同様のヒストン修飾の変化を介して脂肪細胞分化を引き起こしているものと予想される。そこで本研究では、TeBBPAによる脂肪細胞分化促進過程におけるヒストンH3のLys9残基のジメチル化(H3K9me2)の変化を調べた。PPARγおよびUCP2プロモーター領域のヒストンH3K9のメチル化状態は、抗H3K9me2抗体を用いたクロマチン免疫沈降法により解析した。各mRNA量はリアルタイムPCR法により測定した。その結果、MDI分化誘導剤(500 μM 3-イソブチル-1-メチルキサンチン、2.5 μMデキサメタゾン、10 μg/ml インスリン)で処理した3T3-L1細胞では、分化に伴ってPPARγおよびUCP2 mRNAの増加と、これら遺伝子プロモーター領域でのH3K9me2の減少が認められた。しかしながら、10 μM TeBBPA処理により脂肪細胞へ分化した細胞では、これらmRNAは増加したもののH3K9me2の減少は観察されなかった。つまり、TeBBPAはMDI分化誘導剤とは異なるメカニズムを介して脂肪細胞分化を促進していると考えられる。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680526873472
  • NII論文ID
    130006582110
  • DOI
    10.14869/toxpt.44.1.0_p-264
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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