ヒ素メチル基転移酵素の選択的スプライシング

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タイトル別名
  • Alternative splicing of arsenic methyltransferase mRNA

抄録

【目的】当研究室では, 肝がんHepG2細胞においてヒ素メチル基転移酵素(AS3MT) mRNAのスプライスフォームを検出している. 本研究では, 無機ヒ素を曝露した細胞において酸化ストレスが誘発されることを考慮し,過酸化水素(H2O2)曝露後のAS3MT mRNAの選択的スプライシングについて検討を行った. <br>【方法】細胞:ヒト肝癌由来HepG2細胞. mRNA量:RT-PCR法を用いた. タンパク質量:核タンパク抽出後, Western blot法で検出. ヒ素の化学形態:HPLC ICP-MSで検討した.<br>【結果・考察】AS3MT mRNAの選択的スプライシングを網羅的に検出するために, H2O2に曝露されたHepG2細胞から抽出したmRNAを用いてRT-PCRを行った. その結果, H2O2曝露濃度依存的に240 bpのmRNA量が上昇した. このmRNAの塩基配列を決定したところ, エキソン3から9が欠損したAS3MT mRNA(Δ3-9)であることが明らかとなった. 次に, H2O2によるΔ3-9の産生に関わる因子を同定するために, AS3MT mRNA配列においてスプライシングに関与するタンパク質群あるいはそれらが結合しうる配列をデータベースで探索したところ, エキソンの認識に関わるSRp40がAS3MT mRNAのスプライシングに関与する可能性が高いことが推測された. そこでH2O2に曝露されたHepG2細胞を用い検討したところ, H2O2曝露によりSRp40タンパク質量の減少が認められた. H2O2曝露によるSRp40タンパク質量の減少を明らかにするために, ユビキチンープロテアソーム経路の阻害剤であるMG132を同時に曝露したところ, H2O2によるSRp40タンパク質量の減少が抑制された. さらにH2O2曝露によるAS3MT mRNAの選択的スプライシングが細胞のヒ素メチル化能に影響を与えるかについて検討するために, HepG2細胞をH2O2に曝露し選択的スプライシングを惹起させた後, 亜ヒ酸を添加しHPLC ICP-MSでヒ素の化学形態を測定した. その結果, H2O2曝露によりHepG2細胞のヒ素メチル化能が低下することが明らかとなった.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680527210240
  • NII論文ID
    130005483448
  • DOI
    10.14869/toxpt.42.1.0_p-185
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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