脊柱後彎変形者に対する歩行車使用法について

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  • 高さ設定の違いが歩行能力に及ぼす影響

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【はじめに】歩行補助具(以下補助具)の1つである歩行車は、施設利用者の高齢化や重度化に伴い使用頻度はより高くなっているのが現状といえる。歩行車使用においても他補助具同様、個々の身体能力や使用目的に応じた使用法検討の必要性を臨床上経験する。そこで今回、高さ設定に着目し比較的使用頻度が高い脊柱後彎変形(以下脊柱変形)者に対し、歩行車使用時の高さ設定の違いが歩行能力へ及ぼす影響を検討したので報告する。【対象】脊柱変形を有するデイサービス利用者及び老人ホーム入所者女性8例、平均年齢85.5±5.9歳であった。脊柱変形のタイプは、いわゆる「腰曲がり」とした。全例歩行可能であり、日常生活での補助具の利用は、T字杖3例、シルバーカー4例、歩行車1例であった。【方法】高さ調整可能な4輪歩行車を用い、2種類の高さ設定における10m自然歩行時の歩行速度、重複歩距離、歩行率をそれぞれ測定・算出した。同時に歩行場面をビデオ撮影し比較検討した。高さ設定は自然立位と「できるだけ背中を伸ばして下さい」と指示した立位(以下伸展立位)の2通りの立位姿勢を基準とし以下のように設定した。自然立位にて上肢下垂位での肘頭の高さ(以下、自然位設定)と、伸展立位にて肩関節屈曲45°での肘頭の高さ(以下、伸展位設定)の2種類とした。計測は2回行い平均値を計測値とした。また歩行終了後に主観的使用効果、疲労部位について問診した。【結果】歩行速度、重複歩距離は全例自然位設定が高値を示し有意差を認めた(p<0.05)。歩行率では7例が自然位設定で高値を示し有意差を認めた(p<0.05)。測定・算出値結果は自然位設定、伸展位設定の順に以下に示す。歩行速度(sec)17.1±3.8、19.6±4.9、重複歩距離(m)0.78±0.1、0.72±0.1、歩行率(steps/min)95.6±13.5、90.1±14.9 であった。歩行時の使用効果等に関しては、6例が自然位設定において「楽である」と言う訴えを認めた。また伸展位設定では7例で、腰部や下肢に愁訴を認めた。【考察】脊柱変形者においては歩行時、腰背部および下肢後面の筋活動量増大が報告されている。自然位設定では、脊柱変形者にとって歩行車使用特性である寄り掛かりにより、姿勢保持としての上記筋活動の軽減、および荷重分散に伴う体幹・下肢支持性に対する負担軽減が得られたと考える。伸展位設定での歩行では、体幹伸展・骨盤後傾による相対的股関節伸展位や、姿勢変化に伴う下肢支持性に対する力学的不利が生じることなどが考えられ、これらが歩行に影響したものと推察する。今回、歩行車を使用した検討ではあったが脊柱変形者の場合、変形に対し高めの設定を希望する者を経験する。本結果より、脊柱変形者に対する高さ設定の重要性を伺わせた。

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390282680539072000
  • NII Article ID
    130004577172
  • DOI
    10.14900/cjpt.2002.0.506.0
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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