車いす寸法と身体アライメントおよび上肢リーチ範囲の関係
書誌事項
- タイトル別名
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- 対麻痺者での測定・検討
説明
【目的】第40回日本理学療法学術大会において座背角度やシート角度が調整可能な測定用椅子を使用し、健常者におけるシート角度及び背もたれと座面の成す角度(座背角)と身体アライメント,上肢リーチ範囲の関係について報告した。今回は対麻痺者について報告する。【方法】対象は対麻痺男性5名。測定用椅子を用いてシート角度を0度,5度,10度,座背角度を90度,95度,100度の3段階に変化させ,9通りの条件で身体アライメントおよび上肢リーチ範囲の測定を行った。測定用椅子は座位保持装置作成,座位の評価に使用されているピンドット社製キスシミュレーターを改良し使用した。身体アライメントの計測は身体7カ所に標点(以下マーカー)を装着し、矢状面からデジタルカメラで撮影し,画像解析ソフトにて計測した。床面に対して水平な線と各マーカーがなす角度を身体アライメントとし,頸部,体幹,骨盤アライメントを計測した。上肢リーチ範囲はVINE社製牽引式スピードメーターVMS—300を用いて測定した。対象者はできるだけ大きく上肢を前方または上方に動かし,ワイヤーの引き出された距離をリーチ範囲とした。【結果】対象者の中には測定肢位がとれず測定不可能なケースがあった。シート角度および座背角度による身体アライメントの変化では骨盤アライメントにおいて有意差が認められ、シート角度、座背角度の増大に伴って骨盤が後傾する結果となった。上肢リーチ範囲においては上方リーチ,前方リーチともに有意差は認められなかった。【考察】測定不可能であった対麻痺者は骨盤前傾位で,重心が比較的前方に位置しており,上肢を前方および上方へリーチすることで,さらに重心が前方へ移動し,座位保持が困難になったと考えられる。身体アライメントの変化ではシート角度,座背角度の増大に伴って骨盤が後傾したが,頸部,体幹アライメントには一定の変化は示されなかった。シート角度,座背角度の変化は骨盤アライメントに影響しやすく,シート角度の増大は重心を後方へ移動させ,骨盤が後傾する方向に力が働くためであると考えられる。また,座背角度の増大によって体幹は背もたれにもたれかかるようになり,背もたれからの反力が臀部,体幹を前方へ滑らせることになり,骨盤が後傾すると思われる。一方,上肢リーチ範囲では,第40回本学会にて報告した健常者の値と比較すると,対麻痺者が低値を示す傾向が示され,肩甲骨の動きの狭小化や身体アライメント変化による影響が考えられた。【まとめ】就労や就学だけでなく,食事や整容といった基本的な日常生活場面では,上肢の活動空間は頭部,体幹の前面に拡がり,コミュニケーション場面でも同様である。シート角度の増大によって骨盤が後傾することが,上肢リーチ範囲に変化をもたらさない又は減少させるならば,上肢の活動空間をできるだけ前方に確保することが望ましい。
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2005 (0), E1119-E1119, 2006
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680539152128
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- NII論文ID
- 130004579650
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可