側対歩(ナンバ歩き)の運動力学的分析

書誌事項

タイトル別名
  • 第4報・反復練習課題直後の平地普通歩行の変化

説明

【目的】<BR>「側対歩(ナンバ歩き)は運動効率のいい動作である」ということが、各種報道を通して報告されているが、それは真か?これまで本学会においてわれわれは、側対歩(ナンバ歩き)中の下肢運動の運動力学特性について報告してきたが、そこでは、側対歩中の身体重心動揺振幅の増大を下肢関節の力学的対応により補償し、またその反復練習中には身体重心動揺の振幅増大による生じていると思われる運動効率の低下を徐々に修正することが示唆された。今回は反復練習課題前後の平地普通歩行動作を比較し、その練習が直後の普通歩行中の重心動揺に与える影響を検討したので報告する。<BR><BR>【方法】<BR>屋内実験室に設置した7mの歩行路において、健常被験者10名(男性5名、女性5名、平均年齢29.4才、平均身長167.7cm)に、普通歩行10試行、側対歩100試行、普通歩行10試行を連続して行わせ、動作中のマーカ空間位置座標と床反力を三次元動作解析システムVICON370(Oxford Metrics社)を用いて計測した。測定データは全身36マーカによるモデル(PulgInGait; Vicon)により三次元化し、身体合成重心移動軌跡を算出、課題動作のうち側対歩試行前後の普通歩行(以下、試行前、試行後とする)について、各10試行の加算平均値を用いて解析した。なお、比較には統計解析用ソフトSPSS12.0Jを用い、有意水準は5%とした。<BR><BR>【結果】<BR>結果はすべて平均値で示す。身体合成重心の側方移動振幅は試行前17.51±7.94mm、試行後13.54±6.15mmで両試行間に差異はなかった。鉛直移動振幅は試行前24.68±5.24mm、試行後38.23±8.50mmで、試行後が有意に大きかった。<BR><BR>【考察】<BR>Inmanは上肢と下肢を交互に振り出すことは歩行動作の運動効率を高めるための方略とした。それによれば側対歩は普通歩行に比べて運動効率の悪い動作であるといえる。我々は、動作を反復練習する過程において何らかの運動学習を経てるものと仮定し、日常的にこの動作を行わせるのではなく練習課題としての適用する可能性を検討してきた。結果の示すとおり、身体重心移動軌跡は側方の移動量をわずかに減じる傾向にあり、また、鉛直成分では有意に増大することが示された。これは、第38回本学会において報告した側対歩を反復練習した際の身体合成重心移動軌跡の変化と近似する結果にあり、直後に行う普通歩行においても、反復練習中に獲得した何らかの学習効果を保持するものと推察される。<BR>側対歩反復練習前後の動作にいかなる運動学的変化が生じているかは今回の解析の対象とはしていないが、今後、それらの情報を含め多変量による分析を進めていくことが必要と考える。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2005 (0), A0841-A0841, 2006

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680539168512
  • NII論文ID
    130004578919
  • DOI
    10.14900/cjpt.2005.0.a0841.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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