安価な日用品を用いたシーティングユニットの作成

DOI
  • 木暮 伸二
    群馬県医師会 沢渡温泉病院リハビリテーション部
  • 渡辺 宏幸
    群馬県医師会 沢渡温泉病院リハビリテーション部
  • 長坂 諭
    群馬県医師会 沢渡温泉病院リハビリテーション部
  • 風間 佑也
    群馬県医師会 沢渡温泉病院リハビリテーション部

抄録

【目的】標準型車椅子に安価な日用品を用い、最小限の加工で座位保持の効果が向上出来るのではないかと考え、手作りシーティングユニットの作製を試みたので報告する。<BR>【方法】Th12完全損傷38歳男性に対して保冷材・ジャンボスポンジ・滑り止めマット・ちりとり・ファッションケース・カットベニヤ・厚板シート・ビート板・スポンジ座布団・L型本立て・ワンタッチテープを使用し以下の測定を行った。(1)座圧はモルテン社製簡易式体圧・ずれ力同時測定器プレディアを用い、坐骨・仙骨・大腿・脊柱部のずれ力・圧迫力を測定。比較対照としてクッション無し、およびサンライズメディカル社製J2クッションを用いた。(2)リーチ(3)20m走・5分間走 <BR>【結果】材料費2400円で作製可能となった。ずれ力・圧迫力・前方リーチにおいてシーティングユニットが良い成績 (0.5N・58.7mmHg・71mm) であった。20m走・5分間走ではクッション無しが良い成績(9.09sec・280m)であった。<BR>【考察】着眼点として圧分散、骨盤の肢位・安定を目的に保冷材を用いた。ずれ力を斜め下方からの反力で支持し、骨盤の安定と前方滑り防止を目的にちりとりを用いた。ジャンボスポンジは骨盤の安定と体幹伸展のための快適な下肢安定を、ベニヤ板は座面が軟らかくシートが撓むことで骨盤後傾、脊柱後彎の増強を防止することを目的とした。体幹の崩れや屈曲を防止すること、骨盤・仙骨部位置を定めることを目的にビート板下部を加工し、骨盤後部・周辺の軟部組織を納める空間(仙骨サポート)を作製した。さらに、座位姿勢での自然な彎曲を考慮し、ビート板を加工して腰椎サポートを作製することで、腰部バックレスト形状の微調整を行った。脊柱の安定を目的にL型本立てとスポンジ座布団を用いて、胸椎側方からサポートを行った。肩甲骨の動きを阻害しないよう、バックサポート・サイドサポートの上下移動にワンタッチテープを用いた。谷口らは、車椅子シートの硬度の違いが姿勢に与える影響を、ベニヤ板を使用しシートを硬くすると姿勢が改善するのではないかと考えたが良い結果は得られなかったとしている。本研究では個人に合わせた座位姿勢に近づけるため、脊柱を含め骨盤の解剖学的構造を考慮したことで座位保持では骨盤の姿勢と安定、胸椎の自然な伸展、上部体幹の安定に繋がり良い結果をもたらしたと考えられる。しかし、操作性において低値を示したことから、当シーティングユニットでは、安定性との両立は今後の課題と考える。<BR>【まとめ】今回、安価な日用品を用いてシーティングユニットの作製を試みた。衛生対策では買い替えが容易で、清潔なクッション状態に戻すことが可能である。対象が1症例のため今回の結果が一概に良いと断言出来ないが、不良姿勢によって引き起こされる問題を予防する一助になるのではないだろうか。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2005 (0), E1137-E1137, 2006

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680539188096
  • NII論文ID
    130004579668
  • DOI
    10.14900/cjpt.2005.0.e1137.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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