平均情報量を用いた「なめらかさ」の評価

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タイトル別名
  • 信頼性の検討と若年者・高齢者の比較

抄録

【はじめに】なめらかな運動とは,巧緻性・協調性を伴う運動であり,何気ないリーチ運動においても,運動を計画し,なめらかな軌道を描くと言われている.理学療法において,なめらかな運動の獲得を目的とするものも多く,「なめらかさ」を定量的に捉えることは,リハビリテーションの評価場面で期待される課題のひとつである.我々はこれまでに,平均情報量を用いた「なめらかさ」の測定方法を提案し,再現性・妥当性について報告してきた.しかし,これまでの測定系ではノイズの影響が問題となることから,本研究では,ノイズの影響を除いた新たな測定系を用い,この測定方法の信頼性および若年者と高齢者の比較を行った.<BR><BR>【方法】対象は,同意が得られた健常若年者10名(男性5名,女性5名,平均年齢22.8±1.4歳)と,健常高齢者17名(男性9名,女性8名,平均年齢71.9±4.3歳)とした.課題はリズムに合わせて鼻先と印とを交互に差す,反復リーチ運動とした.あらかじめ,利き手の示指(基節骨背側)に3軸加速度センサ(MA3-20Ac,MicroStone社)を取り付け,運動中の10秒間をサンプリング周波数4000Hzにて測定し,得られた3軸の加速度データを合成し解析を行った.「なめらかさ」の指標は,平均情報量(運動中の加速度変化の周波数解析結果を確率曲線に見立て算出したもので,高値を示すほど「なめらかさ」が損なわれていることを意味する)を用いた.信頼性の検討では,若年者を対象に日内・日間の再現性を検討した.リズムは1.0Hz・1.5Hz・2.0Hzの3条件を無作為に提示し,各条件で5施行ずつ測定した.日内の再現性は間隔を1時間以上,日間の再現性は,間隔を1日以上空けて再測定を行い,級内相関係数(以下ICC)(1.0)を用いて検討した.また高齢者の測定は,ICC値が最も高値を示す条件で測定し,Mann-WhitnyのU検定を用いて,若年者との比較を行った.なお,解析は5施行の平均値を用いた.<BR><BR>【結果】日内・日間ともに2.0Hzの条件でICC値が最も高値を示した.(日内の再現性のICC値0.906,日間の再現性のICC値0.816,p<0.01).平均情報量を用いた「なめらかさ」は,若年者で6.94±0.10(bit),高齢者で7.00±0.11(bit)と,両者間に有意差は認められなかった(p<0.05).<BR><BR>【考察】速い運動は,運動を計画し実行するが,遅い運動では,体性感覚や視覚のフィードバックによって運動を遂行することから,2.0Hzの条件が,「なめらかさ」の測定方法として,より高い信頼性を有すると考えた.しかし,本研究では,若年者と高齢者との間に「なめらかさ」の差は生じなかった.これは,課題が直線的で容易であったこと,また高齢者は,自らフィードバックによる修正を用いることで,運動計画の機能低下を補うといった報告があることから,両者の差を反映できなかったと考えた.さらに,協調運動障害を対象に測定を行い,臨床応用の可能性を検討していく必要があると考えた.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2005 (0), A0864-A0864, 2006

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680539216256
  • NII論文ID
    130004578942
  • DOI
    10.14900/cjpt.2005.0.a0864.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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