階段降段時に膝関節不安定性を訴える前十字靭帯損傷症例の電気生理学的検討
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説明
【目的】前十字靭帯(ACL)再建術後4ヶ月にて,階段降段動作時に支持脚(患側)の膝関節不安定性を訴える患者を経験した.膝関節不安定性の主要因を筋力評価に加え,電気生理学的評価を行い,検討した.<BR>【症例提示】62歳,女性.右膝ACL損傷.膝関節可動域は正常であり,大腿周径左右差(左-右)は,膝蓋骨直上5cm,10cmにおいて,それぞれ1cmであった.前方引き出し,N-テストは陰性であった.<BR>【方法】(1)筋力評価:等速性筋力測定器にて角速度60°/sec時の求心性膝関節伸展,屈曲ピークトルク値における健患比を求めた.(2)電気生理学的評価:A.膝関節90°屈曲位における最大等尺性膝伸展時の筋活動(EMG)を求めた.被検筋は両側大腿直筋(RF),内側広筋(VM),外側広筋(VL)とし,双極誘導にて表面電極を貼付した.サンプリング周波数は1KHzとした.得られたEMGの内,安定した3秒間を筋活動量として採用し, 膝関節屈曲60°,体重の10%負荷における膝伸展時の%EMGで除し正規化した(正規化)後に,VM/RF,VL/RF比を求めた.B.電気力学的応答:光刺激をトリガーとし,等尺性膝伸展を行わせ,光刺激から圧センサ(下腿遠位部に貼付)反応までの時間(TTF),光刺激からEMG開始までの時間(PMT),EMG発現から圧センサ反応までの時間(EMD)を求めた.(3)降段動作評価:20cmの段差降段時の振り出し側下肢が離地した瞬間から床接地するまで(支持期)の支持脚のEMGを測定した.支持期に得られたEMGを積分(IEMG)し,支持期の時間で除した%IEMGを求め, 正規化した後,VM/RF,VL/RF比を求めた.<BR>【結果】(1)筋力評価:健患比伸展106.2%,屈曲104.1%.(2)電気生理学的評価:VM/RF健患比;94.4%,VL/RF健患比;74.7%,健患比RF;123.8%,VM;117.0%,VL;92.5%.TTF及びPMTは患側が遅延していた.EMDは左右差を認めなかった.(3)降段動作評価:VM/RF健患比;77.9%,VL/RF健患比;68.4%,健患比RF;145.6%,VM;113.5%,VL;99.6%.<BR>【考察】筋力評価では,左右差は認められなかった.電気生理学的評価では,患側の降段動作,等尺性膝伸展時にRFの筋活動が増加しVM/RF,VL/RF比が低値を示した事から,二関節筋がより働く事が示された.降段動作では支持期において,広筋群の筋活動が増加し,膝関節を安定化させると報告されている. 本症例において単関節筋と二関節筋の筋活動量の変化が膝関節不安定性を助長したと考えられる.また,筋の活動開始時間のばらつきによる筋張力の発揮効率低下も一要因であったと示唆された.<BR>
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2005 (0), C0395-C0395, 2006
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680539249408
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- NII論文ID
- 110004994756
- 130004579324
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- NII書誌ID
- AN10146032
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可