慢性期片麻痺下肢機能に対するミラーセラピーの効果

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  • 直接トレーニングとの比較

抄録

【目的】ミラーセラピーとは、Ramachandran(1995)が上肢切断症例の幻肢痛治療として施行した方法で、片麻痺の麻痺側上肢手指機能について報告されている。しかし片麻痺下肢機能の回復、改善も重要な治療目標であり、下肢機能の向上はきわめて重要である。また従来の研究ではミラーセラピー施行時に、患側肢について健側肢に合わせて自動的運動を行う方法と、他動的運動を行う方法とが報告されており、ミラーのみの効果は検討されていない。本研究では片麻痺下肢機能に着目しミラーセラピーの効果を直接運動課題と比較検討することを目的とした。<BR>【対象】研究の趣旨を説明し同意の得られた、発症から4ヶ月以上経過した慢性期の片麻痺症例14例(右麻痺5例、左麻痺9例、年齢平均65歳)を対象とした。下肢運動麻痺の程度は中等度から軽度であった。<BR>【方法】下肢用ミラーボックスを作成し、内側全面に収まるようミラーを矢状面上に配置し、椅子坐位姿勢の被験者の一側下肢がその中に入るようにした。ミラーボックス上面から実験中は鏡像のみが被験者から観察できるように隙間を残し、上部カバーで被った。運動課題として、足長軸に対して直角におかれた高さ3センチの円柱状の段差を乗り越える課題を10回施行した。実験条件はまず麻痺側下肢で上記課題を行い(プレテスト)、大転子、膝関節中央、外果、第5中足骨頭に反射マーカーを貼付し側方に配置したデジタルビデオカメラにより撮影し画像解析ソフトによって関節角度および課題遂行時間を分析した。次に健側下肢をミラーボックスに置き、ミラーを見ながら3分程度同様の課題を行うがこのとき麻痺側下肢は動かさなかった(ミラー条件)。対照実験として麻痺側下肢でその課題をそのまま3分行う条件(直接条件)を施行した。その後麻痺側下肢で再度上記課題を行い同様な測定をした(ポストテスト)。条件の開始順序はランダムとし、同一被験者に二つの条件を約1週間の間隔をおき施行するクロスオーバーデザインとした。統計学的分析はWilcoxon検定を用いた。<BR>【結果】足関節背屈角度は、ミラー条件の前後で1.6度背屈方向に変化し、直接条件の前後で0.8度底屈方向に変化したが有意差は認めなかった。膝関節角速度変化率は各条件とも17%有意に増大した(p<0.05)が条件間差はなかった。一回あたりの課題遂行時間はミラー条件の前後で3.19秒から2.80秒へと有意に短縮し、直接条件でも同様に短縮したが有意ではなかった。運動麻痺が重症な症例では。直接条件に比べミラー条件の成績が良好となる傾向を認め、軽症例では逆の傾向を示した。<BR>【考察】両条件とも膝関節角速度変化率の増加と課題遂行時間の短縮が認められた。健側鏡像運動の視覚的入力による課題遂行の変化は、単に直接的な運動だけでなく認知的側面からのアプローチの重要性を示唆している。今後ミラーセラピーの適応と限界を含め症例を集積してゆきたい。<BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2005 (0), B0013-B0013, 2006

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680539345280
  • NII論文ID
    130004578957
  • DOI
    10.14900/cjpt.2005.0.b0013.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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