日本版変形性膝関節症患者機能評価表(JKOM)による変形性膝関節症のQOLと関連因子
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説明
【目的】従来、膝OAの機能評価として変形性膝関節症膝治療成績判定基準(日本整形外科医学会)が広く使用されてきた。変形性膝関節症膝治療成績判定基準は評価項目としてADLまで網羅されているものの、主として疼痛との関連が指摘されておりQOLを反映しているとは言いがたい。WOMACは世界的に用いられている膝OAのQOL indexであるが、日本では欧米と比較して生活様式が異なるため、日本人に適応した膝OAのQOL評価方法が求められていた。“日本版変形性膝関節症患者機能評価表(JKOM)”は変形性膝関節症(以下膝OA)に対するQOL評価尺度として開発され、その信頼性、妥当性についてはSF-36やWOMACとの比較検討からも認められている。<BR>本研究は膝OAの病因として確立している年齢、肥満等の各要因に加えて運動機能の各パラメータがQOLに与える影響について検討することとした。<BR>【方法】対象は北里大学膝教室(以下膝教室)に参加した膝に疼痛を持つ女性28名(年齢63.7±8.0歳)であった。参加者にはJKOMによる質問紙表を事前に配布し、膝教室当日に回収すると同時に評価結果の研究使用についての同意を書面にて得た。評価項目は身長、体重、BMI、体脂肪率、除脂肪体重、膝関節可動域(伸展ならびに屈曲)、等尺性膝伸展筋力、10m歩行速度(快適ならびに最大)、歩行時のlateral thrustの有無、膝関節レントゲン前後像(医師の指示下により北里大学病院放射線技師が撮影)よりFemoral Tibial Angle(FTA)ならびに横浜市大式膝OA重症度を判定した。また、超音波断層撮影装置を用い大腿四頭筋の水平断像から筋厚を測定した。筋厚は大腿骨遠位30%の位置にて大腿直筋、大腿中間広筋、大腿外側広筋を測定し、遠位10%にて大腿内側広筋を測定した。統計学的処理はJKOMの総合点数に対する各要因の関連性についてSpearmanの順位相関係数を算出した。有意水準は5%とした。<BR>【結果】対象者のOA重症度の分布は、I:2名、II:21名、III:3名、IV:0名、V:1名であり、対象の多くがgradeIIであった。JKOMの総合点数と各要因間との関連性はBMI(r=-0.41)、Visual Analog Scale(r=0.76)、膝屈曲可動域(r=0.6)、最大10m歩行速度(r=0.72)、快適10m歩行速度(r=0.64)、膝伸展筋力(r=0.63)、膝OA重症度(r=-0.4)であった。<BR>【考察】本研究の結果から、病因として考えられている因子とJKOMとの関連は低く、疼痛や運動機能との関連性が強く認められた。したがって、発症因子としての要素は発症後の運動機能低下には影響を与えず、むしろ運動器の機能低下が膝OAのQOLに影響しているものと考えられた。
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2004 (0), C0393-C0393, 2005
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680539352448
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- NII論文ID
- 110004016336
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- NII書誌ID
- AN10146032
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可