THA術後患者に対する重錘負荷を用いた歩行練習の検討

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  • 時間因子と重心移動の円滑性への影響について

抄録

【目的】重錘を負荷した歩行に関する研究は, 中殿筋の筋活動や股関節荷重との関連で種々行われてきた. 臨床においてもリスク対策としての捉え方のみではなく, 歩容の改善を目的とした練習などにも用いられている. 今回, 患側上肢への重錘負荷が人工股関節全置換術(THA)術後患者の歩行の時間因子ならびに重心移動に与える影響を検討したので報告する.<BR>【方法】対象は7名の変形性股関節症例で平均年齢は39.1歳(21-58歳), 平均体重は45.7kgであった. 全例とも右側THAを施行されており,術後期間は4~5週で独歩開始後1~2週を経過していた. <BR> 2基の床反力計上で,各被験者に自由速度での歩行と右上肢に2kgの重錘を負荷した歩行を行なわせた.各々の試行について, 総床反力各成分をそれぞれ2回積分して3方向の重心の変位を求めた. さらに3次元計測より得られた平均速度データを加え,時間軸に対する重心の位置及び運動エネルギー変化と両者の交換率ならびに重心の仕事量を算出した.各歩行周期時間は,床反力値とフットスィッチより求めた.各歩行パラメーターに関して,各症例3回のデータを用いて,繰り返しのある2元配置分散分析にて,無負荷時と2kg負荷時との差を検定した.<BR>【結果・考察】分散分析の結果から,有意な差が認められた歩行パラメーターは,歩行速度(無負荷時平均:53.6から2kg負荷時:50.2 m/minに減少),歩行率(同102.3から97.7steps/minに減少),右立脚時間比率(62.6から64.0%に増大),右足接地時の両脚支持期と左片脚支持期におけるエネルギー交換率(右接地時両脚支持期:24.4から31.7%に増加,左片脚支持期:53.9から40.4%に減少),左右各接踵期における重心の正の仕事量(一歩行周期全体に対する比率が右接踵期:75.2%から63.5%に減少,左接踵期:21.4%から30.1%に増加)であった.右立脚時間比率の増大や右接踵期における重心の仕事量の減少は,重錘負荷により出力不十分な外転筋群の作用を助け,より姿勢が安定されることによるものと考えられた.また,右足接地後の重心のエネルギー交換率の上昇は同時期において円滑な重心移動が得られていることを示すものと推測された. <BR> THA術後患者の独歩開始時期における問題点として,股関節伸展不足や外転筋群の出力不足,術前に学習された歩行パターンなどの影響により,患側への体重負荷が十分行なえないことや円滑な重心移動が行なえない場合が多い.今回の症例でも,立脚時間比率や,重心移動,重心の仕事量において顕著な左右差や非対称性がみられた.このような症例に対し,軽い重錘を患側に保持することで,患側立脚開始時期における円滑な重心移動や患側立脚期における姿勢の安定が得られることが期待できると考えられた.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2003 (0), C0720-C0720, 2004

    公益社団法人 日本理学療法士協会

キーワード

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680539410688
  • NII論文ID
    130004578157
  • DOI
    10.14900/cjpt.2003.0.c0720.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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