痛覚過敏、アロディニアに対し接触感覚刺激による治療で改善を得た2症例

Description

【はじめに】痛みは治療プログラムの進行を妨げる一因である。痛みの原因については様々であるが、RSD/CRPSを併発していると思われるケースも多々ある。今回我々は、RSD/CRPSの初期症状と思われる痛覚過敏、アロディニアを有する症例に対し、神経学的仮説に基づいた、積極的な接触感覚刺激による治療を実施し、痛みの改善を得たので考察を加え報告する。<BR>【対象】表在感覚としての過敏な痛みを認めた2症例。いずれも整形外科術後患者で、明らかな神経損傷はなかった。<BR>【治療方法】過敏な痛みを認める部位に、タオル、縄製の輪投げを使用し、質感、圧迫の強さを判別するように注意を促しながら接触感覚刺激を行なった。この時、刺激が極端な強い痛みに結びつかないよう注意した。最初はセラピストが接触感覚刺激を加え、方法のわかったところで、患者自身に行なわせた。治療前後でのvisual analogue scale(以下VAS)による痛みの評価を行った。<BR>【症例1】49歳女性、主訴は左膝痛。膝蓋大腿関節障害に対し、鏡視下にてシェービング、ドリリング施行し、術後2日目よりPT開始した。痛みによる膝伸展困難、 筋痙攣を認め、関節可動域訓練、大腿四頭筋訓練は思うように行なえなかった。その後も症状の改善が見られぬまま、術後およそ8ヶ月半後、接触感覚刺激による治療を開始。治療前VAS6(中等度から重度の痛み)、治療直後3(軽度から中等度の痛み)と改善を認めた。その後も、日を改め同操作を行ない、筋痙攣はほぼ消失し、膝の完全伸展を得た。<BR>【症例2】76歳女性、主訴は左膝痛。鏡視下にて内側半月板部分切除術、高位脛骨骨切り術を施行。ギプス固定中から足背部の違和感のような痛みを訴え、4週間後PT開始するも痛みは治まらなかった。足背部に左右差のある表在感覚としての過敏な痛みを認め、接触感覚刺激による治療を開始した。治療前VAS5(中等度から重度の痛み)、治療直後1(軽度の痛み)と改善した。その後も同部位への操作をくり返し。症状は軽快していった。この症例では閉眼時、触刺激に対する痛みの増強(治療前VAS6)を認めた。<BR>【結果】2症例の接触感覚刺激による治療で、VASによる痛みの軽減を確認した。<BR>【考察】RSD/CRPSの運動療法は、痛みを起こさない愛護的な他動運動と積極的な自働運動、リラクゼーション等が基本とされている。しかしながらVan der Laan LらはRSD/CRPSの発生が、単に筋肉を使用しないということでは説明し難いとし、RSD/CRPS患者において組織的な異常、無髄神経線維の減少がみられたことを報告している。今回行なった接触感覚刺激は、Aδ線維や無髄C線維、WDRニューロンを介していると考えられ、無髄神経線維の減少との因果関係が示唆された。

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390282680539426432
  • NII Article ID
    130004578222
  • DOI
    10.14900/cjpt.2003.0.c0908.0
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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