転地療養事業での現状と今後の課題
書誌事項
- タイトル別名
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- 小児喘息児の転地療養事業について
説明
【はじめに】転地療養は,同じ疾患を持った児童達が集まり,家庭・学校などの環境から離れた場所で,レクリエーション,講義などをとり入れ,規則正しい集団生活を送る。その目的として,疾患に対する理解や克服法を深めるだけではなく,今までと違う環境下で仲間意識を築き,お互いに自分の役割を見つけ,自信を持たせる。その自信が疾患に対する自己管理能力を引き出すものにつながる。今回,喘息児の転地療養事業を都内A区・B区の2区で実施し,理学療法士(以下PT)が一名ずつ参加した。両区ともキャンプの目的として,『腹式呼吸・喘息体操などの鍛錬を修得』『喘息に対する正しい知識・発作時の対処方法の理解』を掲げている。そこで,転地療養事業の現状と今後の課題について検討した。【キャンプ概要】キャンプは児童の夏休み期間を利用した4泊5日であった。参加児童数はA区で35名,B区で40名,医療スタッフとして,医師,看護士,PT,保健士,生活指導員として,レクリエーション療法士,小学生教諭,キャンプOB,学生が同行した。参加児童は両区ともに,小学3年生から中学3年生までの男女(平均年齢11.6歳)を対象とし,異なる年齢層を組み合わせて,6から8班を作り,班長がリーダーシップを取り,班単位で生活をした。腹式呼吸の指導や喘息学習も班単位で行われるため,年上の者が年下の者の手本になる,フォローをするという構造が自然にできる。【現状】2区共に参加スタッフの役割分担が,レクリエーションは生活指導員,喘息学習は医療スタッフのみになっていた。その中でもPTの役割は『腹式呼吸の習得』に重点を置かれてしまい,PT自身も他のスタッフもその認識が強くなりがちである。『腹式呼吸の習得』のみを考えるのであれば,病院でも行える。つまり,それぞれのスタッフが独自の専門性に捉われ,チームアプローチができていなかったため,児童の全体像がとらえづらく,児童がフィードバックできているかも把握できない。日常から離れた場所で行う転地療養の利点が活かされていなかった。【今後の課題】転地療養は同じ疾患を持つ集団の中で情報交換をしながら自分の喘息知識をフィードバックする事ができる場である。転地療養事業でのPTの役割は個別指導での『腹式呼吸の習得』だけではない。他のスタッフと連携を取り,キャンプをコーディネートしながら,児童間の情報交換が円滑に行えるように子供の全体像を把握しながらサポートする。その方法としてレクリエーションの活用,または遊戯療法を使って疾患に対する理解や克服法を深めていくように誘導する。病院でもできる理学療法ではなく,転地療養だからこそ行える理学療法を提供していかなければならない。
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2002 (0), 408-408, 2003
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680539480320
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- NII論文ID
- 130004577063
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可