スウェーデンにおける成人および高齢重度一次障害者に対する二次障害予防の取り組みと成果、それを支える要因に関する考察

DOI
  • 山口 真人
    医療法人錦秀会阪和第二泉北病院リハビリテーション部
  • 上田 陽之
    医療法人錦秀会阪和第二泉北病院リハビリテーション部

書誌事項

タイトル別名
  • 特別住宅、ケア付きアパート、在宅での事例を通して

抄録

【目的】本研究の目的は、スウェーデンの特別住宅、ケア付きアパート、在宅で暮らす成人および高齢重度一次障害者の二次障害予防の取り組みと成果を示し、その要因について明らかにすることである。<BR><BR>【方法】2005年5月から7月にかけて、スウェーデンのヴェクショーおよびクロコムの両コミューン(日本の市町村にあたる基礎自治体)内の特別住宅、ケア付きアパート、在宅に暮らす維持期の成人および高齢一次障害者115名について、その二次障害レベルを調査するとともに、うち特に重度の一次障害をもつ7名(性別:男性4名、年齢:40歳以上65歳未満3名、65歳以上4名、診断名:糖尿病性神経炎による腰部下完全対麻痺、脳梗塞後左片麻痺、小児麻痺、脳梗塞後右片麻痺、頭部外傷による重度四肢麻痺、多発性硬化症(2名)、いずれも発症後数年以上経過)を対象に、ケアおよびリハビリの内容、補助器具使用状況の詳細を調査した。一次および二次障害レベルの評価には、筆者およびコミューン勤務のスウェーデン人理学療法士と作業療法士の3名が作成した評価表を用いた。<BR><BR>【結果】一次障害の重度さに比して、鼻腔経管栄養、褥創、四肢拘縮といった二次障害の発生および進行が極軽度に抑えられていた(115件中、鼻腔経管栄養0件、褥創1件、四肢重度拘縮0件)。日々のリハビリは、採血、創治療、常薬投与などの医療的ケアから身体ケア、さらにはルーティーンのリハビリまでをこなす看護助手や、文字通り24時間365日一人の障害者のケアおよびリハビリを行う個人ケアアシスタントといった職種によって施行されていた(プログラム作成は理学療法士)。補助器具は、いずれの対象者も、身の回りの小物から大型のリフターに至るまで、複数の補助器具を日常的に利用していた。<BR><BR>【考察】二次障害が重度化しない理由としては、一つは看護助手、個人ケアアシスタントなど看護・ケアの最前線のスタッフによるリハビリが、日常的ケアの中にルーティーンとして含まれていること、もう一つは、補助器具をふんだんに利用することで、対象者の基本動作から日常生活行為までの全ての生活場面における活動を維持し続けていることが考えられる。補助器具利用が進む大きな要因には、制度的なアクセスのしやすさ(どのコミューンでも、無料もしくは極低料金によるレンタルが可能)、専門の補助器具センターにおける質量両面での豊富な供給などが挙げられる。そして、そういった現場の状況を支えている基盤は、「二次障害は、治療するものではなく予防するものである」という認識の下、議会の決定、社会サービス法、LSSなどの法制度によりケアおよびリハビリの具体的内容が法的権利として認められ、市民に周知されていることであろう。<BR><BR>【まとめ】スウェーデンにおける重度一次障害者に対する二次障害予防の取り組みと成果について現地調査し、それを支える要因について考察した。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2005 (0), E0986-E0986, 2006

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680539505408
  • NII論文ID
    130004579517
  • DOI
    10.14900/cjpt.2005.0.e0986.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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