立ち上がり動作中の脊柱と骨盤運動の関係

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【目的】円背を呈する高齢者において立ち上がり動作(以下、sit-to-stand;STS)開始時に離臀できない場面が多く見られる。臨床場面においては、体幹前傾を動作の一つとして指導することが多いが、体幹前傾を促してもSTSが自立しないことが多々ある。<BR> 本研究の目的は、STSにおける体幹前傾に着目し、骨盤運動の影響による上・下部体幹の挙動に着目し、股関節の屈曲角度を制限したSTSとを比較検討した。<BR>【方法】健常成人男性6例(年齢23.1±2.1歳、身長170.9±7.6 cm、体重66.4±6.0 kg)を対象とした。各被験者に十分な説明し同意を得た後、40cmの台上から両上肢下垂位で膝関節90°屈曲位、足関節中間位とした椅子坐位を開始肢位とし、股関節屈曲運動を制限するために両鼠径部に高密度スポンジ(10 cm×5 cm×5 cm)をテーピングにて固定したSTS(以下、制限群)および非固定でのSTS(以下、対照群)の脊柱角度を比較した。脊柱角度は、被検者に赤外線反射マーカーを第1胸椎(以下、T1)、第7胸椎(以下、T7)、第12胸椎(以下、T12)、第3腰椎(以下、L3)、第2仙椎(以下、S2)の棘突起、両側の上後腸骨棘(以下、PSIS)、大腿骨大転子(以下、Hip)、膝外側裂隙(以下、Knee)に貼付し、三次元動作解析装置(VICON PEAK社:VICON612)を用いて、取り込み周波数120Hzで測定を行い、関節の空間座標を計測した。空間座標データより矢状面でのT1・T7・T12のなす角から上部胸椎解剖学的角度(以下、θ1)を求めた。同様にT7・T12・L3から下部胸椎解剖学的角度(以下、θ2)、T12・L3・S2から腰椎解剖学的角度(以下、θ3)、およびPSIS・Hip・Kneeから股関節解剖学的角度(以下、θ4)を求めた。これらから、離殿時期であるθ4の最大屈曲時での各解剖学的角度を求めた。<BR>【結果】θ4の最大屈曲時での各解剖学的角度の平均は、θ4は対照群42.0°±7.2°、制限群28.3°±9.6°、θ3は、対照群7.4°±5.2°、制限群12.7°±6.0°、θ2は、対照群5.4°±6.0°、制限群11.4°±4.5°、θ1は、対照群12.5°±2.8°、制限群14.4°±4.1°であった。<BR>脊柱と骨盤運動の関係においては、全被験者6名のうち4名は全脊柱屈曲優位(以下、全脊柱優位)で、残りの2名は下位脊柱屈曲優位(以下、下位優位)のSTSを行っていた。<BR>【考察】本研究では、健常成人での対照群・制限群のSTSでの体幹動作パターンは、全脊柱優位・下位優位パターンの2つの異なる動作を認めた。前者では、屈曲相が十分でないにもかかわらず伸展相に移行していた。後者では下肢の伸展と体幹の伸展が分離して行われていた。これは、前者では体幹・頭部を分離せず重心の位置を操作している動作を行っていたと推察した。後者では体幹と頭部の分離運動により重心を操作していると考えた。

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