Functional Balance Scaleを用いた移動動作能力の把握と膝伸展筋力の予測

  • 向井 雅俊
    大分リハビリテーション専門学校理学療法士科
  • 吉原 理恵子
    大分リハビリテーション専門学校理学療法士科
  • 廣田 美江
    国立病院機構大分医療センターリハビリテーション科

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説明

【目的】<BR> Functional Balance Scale(以下FBS)は,定量的な尺度による得点基準が設定されているため,検者間の再現性がよく,近年多くの報告で用いられるようになってきたが,その有用性に関する報告は少ない.本研究は,FBSの内容を平地での移動動作に必要な項目とその他の項目に分け,膝伸展筋力との関係性に着目し,FBSの有用性について検討した.<BR>【方法】<BR> 対象は,運動器疾患を有さない内科・外科疾患の入院患者15名で,平均年齢は72.3±12.9歳である.膝伸展筋力の測定はハンドヘルドダイナモメーター(日本メディックス社製マイクロFET)を用い,等尺性収縮で左右とも3回ずつ測定し,左右の最大値の平均を,Nm/kgで表した.FBSは,「坐位」,「立ち上がり」,「腰掛け」,「立位」,「移乗」,「閉眼での立位」,「閉脚での立位」,「立位での前方リーチ」,「床からの拾い上げ」,「後ろへの振り向き」,「方向転換」,「踏み台への足乗せ」,「タンデム立位」,「片脚立位」の全14項目を56点満点で点数化した.平地での移動動作はFBSより「立ち上がり」,「立位」,「腰掛け」,「移乗」,「方向転換」の5項目をFBS5として20点満点で点数化し,その他はFBS5以外の9項目をFBS9として36点満点で点数化した.<BR>【結果】<BR> 膝伸展筋力はFBS(r=0.56),FBS9(r=0.54)と相関を認め(p<0.05),またFBS5との間においてはFBSおよびFBS9より高い相関を認めた(r=0.59,p<0.02).また,FBS5で20点満点を示した全ての症例は,膝伸展筋力が0.59Nm/kg以上を示した.<BR>【考察】<BR> 山崎は0.6Nm/kg程度の膝伸展筋力を有することで室内での移動動作の獲得が可能であると述べている.今回の結果において,平地での移動動作能力として表したFBS5が満点を示した症例は,0.6Nm/kg程度の膝伸展筋力を有し,また膝伸展筋力とFBS5の間に高い相関関係を認めた.今回の研究より,FBS5の項目は平地での移動動作能力の把握や膝伸展筋力の予測にも利用できる事が示唆された。FBSは高齢患者のバランス能力の評価を目的に開発され,転倒の危険性の指標としても利用されているが,FBSを応用することで,さらに利用範囲が拡大できるのではないだろうか.<BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2005 (0), A0717-A0717, 2006

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

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