トレッドミル歩行分析による足部内外反運動の計測
この論文をさがす
説明
【はじめに】足部の過剰な内反運動は,異常歩行として臨床の歩行分析で重要な評価の対象となる.特に立脚期の過剰な足部内反は,下肢の支持性と安定性の低下に大きく影響を及ぼす.そのため歩行中の足部内外反運動の詳細かつ客観的な評価は臨床で必要とされる.<BR> しかし臨床における足部内外反運動の評価は,主に視覚的観察が用いられており,客観的な評価はほとんど行われていない.さらに研究分野においても歩行中の足部内外反運動を分析した報告は非常に少ない.これは足部内外反運動の角度定義が曖昧であることと,歩行障害を有する低歩行能力者は,再現性が低下していることが挙げられる.<BR> そこで,省スペースの定常環境下にて多数歩採取が容易となるトレッドミルで3次元動作解析を用い,歩行中の足部内外反運動の計測を試み,その方法と分析結果について検討したので報告する.<BR>【対象・方法】対象は,健常群5例(すべて男性,平均年齢26.8±3.0歳)と脳卒中片麻痺患者(以下:片麻痺)1例(32歳女性)とした.被験者には研究の主旨を口頭および文章にて説明し,参加への同意を得た.また,研究計画については当大学倫理委員会の承認を得た.計測は,3次元解析装置Kinema Tracer(キッセイコムテック株式会社製)を使用し,トレッドミル上でサンプリング周波数60Hzにて20秒間記録した.トレッドミル速度は,健常群:2km/h,片麻痺:0.8km/hに設定した.動作解析用マーカーは,LEDマーカー(18mm)を使用し,両側の肩峰,大転子,大腿骨外側上顆,外果,第5中足骨頭,足背内側(第一中足骨を通る前額面への垂線と第5中足骨頭から矢状面への垂線の交点)に装着した.マーカーを自動追跡にて3次元に構成し,角度変化を歩行周期の平均値にて正規化した後,加算平均処理した.足部の内外反角度は,大腿骨外側上顆と外果のベクトルと足背内側と第5中足骨頭のベクトルから成す角より求めた.<BR>【結果および考察】健常群5例の計測で採取された平均歩数は12.2歩,片麻痺では9歩であった.健常群における歩行周期の足部内外反運動は5例とも同じ傾向にあり,踵接地では平均6.3°の内反位を呈しており,立脚中期に正中および軽度外反位(平均0~2°),立脚後期から遊脚期にかけて内反になる運動パターンの傾向(最大内反7.8°)を示した.片麻痺では,患側下肢において,踵接地では,21.6°の内反位を呈し,立脚中期に正中および軽度外反位(0~2°),立脚後期から遊脚期にかけて過剰な内反になる運動パターン(最大22.7°)を示した.トレッドミル歩行分析では,多数歩にて正規化後加算平均処理が容易となるため,歩行周期の足部内外反運動を明確に示すことが可能になった.また,この計測では標準偏差,変動係数といった統計学的検討も可能となるため,臨床の歩行分析において有用と思われた.
収録刊行物
-
- 理学療法学Supplement
-
理学療法学Supplement 2005 (0), A0722-A0722, 2006
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
- Tweet
詳細情報 詳細情報について
-
- CRID
- 1390282680539577088
-
- NII論文ID
- 110004995083
- 130004578800
-
- NII書誌ID
- AN10146032
-
- 本文言語コード
- ja
-
- データソース種別
-
- JaLC
- CiNii Articles
-
- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可