早期離床に主眼を置いた開腹術後における理学療法の検討

DOI
  • 横山 浩康
    JA埼玉県厚生連熊谷総合病院リハビリテーション科
  • 曷川 元
    日本大学医学部附属板橋病院リハビリテーション科
  • 安部 斉子
    日本大学医学部附属板橋病院看護部
  • 木村 忠彰
    日本大学医学部附属板橋病院リハビリテーション科

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抄録

【はじめに】近年、開腹術後に対する理学療法(以下PT)は、多職種の注目を集めている。その目的は、術後に発生する呼吸器合併症の予防と早期離床である。しかし、成書では徒手的呼吸介助による換気効率の改善及び排痰を中心に書かれているものが多く、その適応が不明確な為、他職種も含めた後療法の方針は、病院によって様々である。そこで我々は、当院での開腹術後における後療法を検討する目的で、開腹術後のPTを後方視的に比較・分析を行った。<BR>【対象】平成15年11月から平成17年9月までの間に当院外科にて開腹術を行い、術後にPTを施行した胃癌患者20例を期間による後療法の相違によりA群・B群に分けた。内訳としてA群は、換気効率の改善を目的に徒手的呼吸介助を中心にPTを行っていた10例、平均年齢74.4±12.4歳(MEAN±SD)、術式は、胃全摘+他臓器摘出4例、幽門側切除術3例、噴門側切除術1例、バイパス術2例。B群は、早期離床を中心にPTを施行し、1)中枢気道付近に喀痰の貯留を確認した時、2)頻呼吸の是正が必要であった時、3)離床により呼吸困難感が生じた時、に限定して徒手的呼吸介助を行っている10例、平均年齢73.0±20.0歳、術式は、胃全摘+他臓器摘出4例、幽門側切除術4例、バイパス術1例、胃全摘1例である。<BR>【比較・分析項目】上記の2群に対し、1)酸素投与終了までの日数、2)端座位・歩行自立までの日数、3)集中治療室及び個室管理日数、4)手術後3~5病日での肺合併症の発生数を比較した。統計処理はMann-whitneyU検定を用い、有意水準5%未満を統計学的有意差ありとした。<BR>【結果】]1)A群8.6±12.4日 B群3.8±7.2日、2)A群端座位4.8±10.2日 歩行10.7±15.3日 B群端座位2.1±4.9日 歩行4.7±9.3日、3)A 群14.8±35.2日 B群6.2±6.8日、4)A群4例 B群1例、いずれも有意差を認めなかった。<BR>【考察】結果は有意差を認めなかったが、全項目においてB群の方が短縮した傾向にあった。これは、1)早期離床中心のPTによりモビライゼーションに費やす時間が増加したこと、2)他職種を含めた後療法の方針も早期離床が中心となり効率的になったこと、が影響していると考えられる。開腹術後の患者は、臥位よりも坐位・立位の方が換気効率の改善効果が得られやすく、呼吸器合併症等の予防に有効であると思われる。多くの施設では、単位制限の問題から限られた時間でPTの効果をあげなければならない。このような現状で、ルーチンとして徒手的呼吸介助を導入する事は、モビライゼーションの時間を減少させる可能性があり適応を限定して行う必要があると考えられる。今後、症例数を増やし当院における開腹術後のPTの方法や医療経済効果について検討していきたい。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2005 (0), D0535-D0535, 2006

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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