人工呼吸器管理下における肺コンプライアンス測定の再現性

  • 横山 仁志
    聖マリアンナ医科大学病院リハビリテーション部
  • 森尾 裕志
    聖マリアンナ医科大学病院リハビリテーション部
  • 平木 幸治
    聖マリアンナ医科大学病院リハビリテーション部

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説明

【はじめに】<BR> 肺・胸郭のしなやかさを反映する肺コンプライアンスは,換気量や呼吸仕事量に影響を与えるため,人工呼吸器からの離脱(ウィーニング)の予測において重要な指標である.また,その測定値からは人工呼吸器装着患者の理学療法の進行に有益な情報を得ることができる点で有用である.しかし肺コンプライアンス測定の信頼性については不明な点が多く,検討すべき点が残されている.そこで本研究では,肺コンプライアンスの測定値を臨床場面で活用するために,肺コンプライアンス測定の再現性について検討したので報告する.<BR>【対象と方法】<BR> 対象は,当院リハビリテーション部が介入した人工呼吸器装着患者10例(平均年齢76.8±3.4歳,男性7例,女性3例)である.人工呼吸器管理に至った疾病内訳は,胸腹部外科術後4例,肺炎3例,心不全1例,中枢神経疾患1例,神経筋疾患1例であった.これらの対象者の肺コンプライアンスを測定し,再現性について検討した.<BR> 肺コンプライアンスは,動的肺コンプライアンス(Cdyn)と静的肺コンプライアンス(Cst)を人工呼吸器(Bennett7200ae・Servo900C)を用いて測定した.測定は,換気モードを従量式の調節呼吸あるいは部分的補助換気(吸気流量波形;矩波形)にし,吸気終末ポーズ時間を0.3秒に設定した状態で行った.その際の呼気時の一回換気量(Vt),最高気道内圧(PIP)および吸気終末ポーズ圧(EIP),呼気終末陽圧(PEEP)を表示パネルから読み取った.そしてCdynはVt/(PIP-PEEP)に,CstはVt/(EIP-PEEP)に読み取った値を代入して算出した.以上の測定を一症例につき2名の検者が各2回実施し,得られた結果から肺コンプライアンス測定の検者内および検者間再現性について検討した.なお,検者間再現性を検討する際の代表値は,いずれも2回の測定値の低い値を採用した.統計的手法は対応のあるt検定,級内相関係数(ICC)を用い危険率1%を有意水準として検討した.<BR>【結果と考察】<BR> CdynとCstの同一検者内における測定値は,Cdyn(1回目;27.7±13.9ml/ cmH2O vs 2回目;27.1±13.3ml/cmH2O),Cst(1回目;40.0±16.8ml/cmH2O vs 2回目;41.0±17.3ml/ cmH2O)ともに有意差を認めなかった.そして双方のICCは順に0.986,0.985と極めて良好な値を示した(p<0.01).次に異なる検者間の測定値では,Cdyn(26.2±12.8,26.9±14.2ml/cmH2O),Cst(38.8±16.7, 40.2±17.6ml/cmH2O)のいずれも有意差は認められず,ICCも順に0.980,0.991と極めて良好な結果を示していた(p<0.01).<BR> 以上のことより,人工呼吸器管理下における肺コンプライアンスの測定は検者内・検者間ともに極めて良好な再現性を有していた.よって,人工呼吸器装着患者の肺コンプライアンスの測定は,臨床場面において活用可能なものと考えられた.<BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2005 (0), D0522-D0522, 2006

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

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