高齢者における術後無気肺の発生因子について

説明

【はじめに】近年,高齢者に対しても外科手術適応が拡大している。しかし一方,高齢者においては術後の肺合併症の発生頻度が高い傾向があるとの報告もある。そこで今回,高齢者における術後無気肺の発生因子について,術前及び術後要因から比較検討したので報告する。【対象及び方法】当院で2002年1月より2002年9月の9ヶ月間に周術期の理学療法を実施し,術後主治医より無気肺を指摘された8例(平均年齢78.25±7.1歳,以下無気肺群と略す)と,年齢に差がなく術後無気肺を認めなかった13例(平均年齢74.92±4.4歳,以下非無気肺群と略す)について,疾患群,術前の肺機能検査,喫煙歴,BMI,術中の麻酔時間及び人工呼吸器管理による挿管時間について比較検討し無気肺発生の予測因子を検討した。疾患群の内訳は,肺癌2例,上腹部疾患11例,下腹部疾患8例であり,肺癌2例については開胸術を施行され,他は開腹術を施行された。呼吸機能検査は術前にルーチンで行なわれており,チェスト社製のCHESTAC-33を用いられている。統計処理は対応のない2群間の差の検定で,F検定,カイ2乗検定を用い危険率5%未満を有意とした。【結果】無気肺群と非無気肺群を比較して,疾患群,術前の呼吸機能検査,喫煙歴,BMI,術中の麻酔時間について有意な差は認められなかった。しかし,挿管時間に関して無気肺群が36.04±35.39時間,非無気肺群が4.77±1.55時間と無気肺群が有意(p<0.001)に長時間であった。また術前の呼吸機能検査より,末梢気道の閉塞性変化を示すV(dot)25<1l/secとV(dot)50/V(dot)25>3に関しては2群とも閉塞性変化を示していた。【考察】無気肺の危険因子としては,高齢・肥満・喫煙と言われているが,今回の結果からは高齢者に関しては,肥満・喫煙を含めて術前に無気肺を予測することが困難であると考えられた。一方当院では,術翌日からICUより術後の理学療法を開始し,呼吸指導や排痰指導及び離床を促し約1週間で術前の歩行状態が獲得されうるプロトコルが使用されている。しかし,今回の調査結果から術後何らかの原因で挿管が長期化した場合は,抜管後に無気肺になる傾向がみられた。理由として,2群とも術前の呼吸機能検査から末梢気道の閉塞性変化を示していたことに加え,挿管時間において有意な差が認められたことから,高齢者に対する長時間の挿管は,患者に活動性を低下させるほかに,抜管後に気道閉塞を生じさせ,無気肺を発生させているのではないかと考えられた。2群ともに末梢気道の閉塞性変化を示していたが,術前の短期間では呼吸機能の向上は望めないとの報告もみられている。よって,今回の調査結果から,術後長時間にわたり人工呼吸器管理による挿管が強いられた高齢者に対しては,抜管後に頻回なる理学療法を含め積極的な対応が必要である,と思われた。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2002 (0), 410-410, 2003

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680539655040
  • NII論文ID
    130004577066
  • DOI
    10.14900/cjpt.2002.0.410.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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