無酸素性閾値を基準にした一定強度運動負荷後の心拍数回復過程に関する検討

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抄録

【目的】本研究は,無酸素性閾値(anaerobic threshold:AT)を基準に設定した低強度の一定時間・強度運動負荷後の心拍数(heart rate:HR)回復過程における変化を検討することを目的とした.<BR>【方法】対象は健常女子大学生8名(平均年齢20.3歳,平均身長158.2 cm,平均体重49.9 kg)であった.ヘルシンキ宣言に基づき,被験者に実験の目的・危険性等を説明し書面で承諾を得た.被験者の運動負荷課題は,運動前安静10分間,自転車エルゴメータ(エアロバイク75XL,コンビ)駆動6分間,運動後安静15分間とし,1日以上の間隔を空けて試行1~3の計3回行った.各試行の負荷量(load)[W]は,呼吸代謝測定装置(AE-300S,ミナト医科学)およびエルゴメータを用いて事前に測定したAT [ml/ kg/ min]を基にして,試行1:100%AT,試行2:80%AT,試行3:60%ATに設定した.HR[beats/min]は心拍モニター(S810i,Polar)により測定し,運動前安静時後半5分間の平均HR(HR rest),運動負荷中4分から6分の平均HR(HR ex),運動後の回復時間(heart rate recovery time:HR-RT)[sec]を算出した.なお,HR-RTは運動終了後のHR10拍の平均値が,HR rest±標準偏差の範囲に入った時点を回復時点と規定し算出した.統計解析はSPSS Ver.12を使用し,各試行間での比較,検討を行った.<BR>【結果】1)ATおよびAT時の仕事率の平均値は,14.7 ml/ kg/ min,50.7 Wであった.2)HR res平均値は,試行1:81.6,試行2:76.1,試行3:76.3 beats/ min,HR ex平均値は,試行1:118.5,試行2:101.5,試行3:96.4 beats/ minであった.3)各試行でのHR-RT平均値は,試行1:71.2,試行2:51.8,試行3:34.4 secであった.4)HR-RT(Y)と各被験者のAT(X1)およびload(X2)は,Y=7.72 X1+1.95 X2-140(r=0.60,p=0.028)の関係を示した.<BR>【考察】一定強度の運動負荷に対し呼吸循環系は一定の応答を示し,HRの減衰に関しては,急速な迷走神経応答と緩徐な交感神経の減弱により支配され,心仕事量の調節をしているとされている.本研究において,運動強度が低いほどHRの回復時間は短縮したことから,ATレベル以下の低強度の一定強度運動負荷においても,運動強度の違いにより運動中の交感神経の活動性と運動終了後における副交感神経の応答が異なることが考えられた.また,被験者のATレベルおよび運動負荷量によりHR回復時間を予測できる可能性があることが示された. <BR>【まとめ】低強度の一定時間・強度運動負荷後のHR回復過程における回復時間の延長・短縮には,対象者のATおよび運動負荷量の影響がみられる.HRに影響を与える要因を運動療法・運動処方に応用できる可能性が示唆された.なお,本研究は首都大学東京健康福祉学部研究安全倫理委員会の承認を得て実施した.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2005 (0), A0808-A0808, 2006

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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