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説明
【はじめに】絶対筋力の理論に基づき、我々は大腰筋の筋断面積比と重心動揺との関係について検討し、安静立位時の重心の前後方向制御能と大腰筋の筋断面積比率が逆相関することを報告した。今回、立位時の重心動揺の側方制御要因を明らかにするために、解剖学的、運動学的観点から中殿筋ならびに大殿筋に注目し、検討をおこなったので報告する。<BR>【目的】安静立位における中殿筋ならびに大殿筋の側方への重心動揺制御能を筋断面積から検討する。<BR>【対象】下肢・体幹に問題を有しない健常成人16名、男性12名、女性4名、平均年齢27.6±3.9歳を対象とした。<BR>【方法】大腰筋と中殿筋の断面積はMRIにて評価した。MRIはTOSHIBA製FLEXART 0.5Tを使用した。撮影条件はT2強調画像(TR=4200・TE=120)で行い、腸骨稜から大転子下端部を等分の12スライスで撮影した。測定肢位は、腹臥位で股関節、膝関節ともに屈曲伸展0°とした。撮影されたMRI画像は、スライス毎、筋毎にマーキングされ、コンピュータにてその面積を算出し、その値を筋の断面積とした。測定した各スライスの筋単位の断面積を総和し、大殿筋、中殿筋、大殿筋と中殿筋の合計で、3種類の総筋断面積値を算出した。<BR>重心動揺の測定にはアニマ社製グラビコーダ(GS-30)を用いた。測定項目は総軌跡長、単位軌跡長、単位面積軌跡長、実効値面積、Y軸方向動揺平均中心変位、X軸方向動揺平均中心変位、Y軸方向動揺中心偏倚、およびX軸方向動揺中心偏倚とした。測定肢位は足幅を5cmとした閉眼・自然立位とした。測定時の足の位置は足長の中央部が重心動揺計の中央にくるように基準線に合わせ、測定時間は初期応答後からの30秒間とした。データは3施行の平均値を被験者の平均身長にて正規化したものを用いた。<BR>統計処理は各殿筋の総筋断面積値と重心動揺検査の各項目との関係をピアソンの相関係数検定を用いて検討した。危険率は5%水準をもって有意とした。<BR>【結果】中殿筋の筋断面積とY軸方向動揺平均中心変位ならびにY軸方向動揺中心偏倚との相関係数は-0.63(p<0.01)、-0.62(p<0.05)であり、共に有意な負の相関を認めた。その他の指標、ならびに大殿筋との有意な相関関係を示す項目はみられなかった。<BR>【考察】本研究の結果から、中殿筋の弱化は骨盤の安定性を低下させることが明らかとなったが、安静立位の場合には、その影響は側方ではなくより不安定である前後方向に出現すると考えられた。また、安静立位に限れば、大殿筋の大きな機能の発揮はそれほど必要ではないと考えられた。しかし、今回の検討では立位時の重心動揺の側方制御要因は明らかとならず、今後の課題となった。
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2005 (0), A0781-A0781, 2006
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680539803392
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- NII論文ID
- 110004995142
- 130004578859
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- NII書誌ID
- AN10146032
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可