腹直筋皮弁による乳房再建術後の体幹機能訓練の検討

  • 高森 陽子
    東海大学医学部付属病院リハビリテーション技術科
  • 田所 美樹
    東海大学医学部付属病院リハビリテーション技術科
  • 南谷 晶
    東海大学医学部付属病院リハビリテーション技術科
  • 栗原 由佳
    東海大学医学部リハビリテーション学教室
  • 日原 信彦
    東海大学医学部リハビリテーション学教室
  • 石田 暉
    東海大学医学部リハビリテーション学教室

説明

【はじめに】当院では、乳房切除術後の乳房再建法として、腹直筋の両側あるいは片側に下腹部の皮膚と脂肪をつけて皮下トンネルを通して乳房部に移植する横軸型腹直筋皮弁(Transverse Rectus Abdominis Myocutaneous flap:以下TRAM flap)が用いられ、乳房再建の良好な成績が得られている。一方で腹直筋筋力低下や腰痛等の問題点も知られているが、体幹機能に対するリハビリテーションについての報告はない。そこで、当院で再建術後患者にアンケート調査を行なった結果、術後は、体幹前傾姿勢などの姿勢不良の訴えが多く、基本動作改善の遅延との関連が示唆された。また、術後、下肢伸展仰臥位が可能となるまでに2ヶ月以上要す症例がおり、この多くは姿勢不良を生じていることが分った。以上より、TRAM flap術後患者への体幹機能訓練の必要性が示唆され、当院では2002年9月より開始している。今回は、当院で作成・施行されている訓練の紹介を行い、また訓練施行患者における術後(術後5、6日)、退院時、術後1ヶ月時(以下1M)、術後3ヶ月時(以下3M)の姿勢、動作の経時的変化を比較し、当院で行われている体幹機能訓練の有用性を検討したので報告する。<BR>【対象と方法】当院にて2002年9月~2003年7月までにTRAM flapによる乳房再建術を施行され、術後体幹機能訓練を行った患者16名(片側11名、両側5名)、平均年齢46.4歳を対象とした。術後、退院時、1M、3Mの立位時体幹前傾姿勢(以下 前傾姿勢)の有無、下肢伸展仰臥位保持の可否、背臥位から長坐位までの起き上がり動作(側臥位を介さないもの、上肢使用は可とする)の可否について経時的変化を比較する。<BR>【当院における体幹機能訓練の概要】<BR>姿勢・基本動作指導、腹式呼吸、筋力増強訓練、ストレッチング<BR>【結果】訓練施行後、腹壁瘢痕ヘルニア、創離開等の腹部の合併症は認められなかった。前傾姿勢は、術後で8例(50.0%)認められたが、退院時は2例(12.5%)となった。その後1M、3Mまで続いた症例が1例認められた。下肢伸展仰臥位保持は術後で7例(43.8%)が不可能であったが、退院時は全例で可能となった。起き上がり動作は、術後で14例(87.5%)が不可能だった。その後は退院時で8例(50.0%)、1Mで9例(56.3%)、3Mで12例(75.0%)が可能となった。<BR>【考察】術後、前傾姿勢が過半数に認められ、下肢伸展仰臥位保持も半数近くが不可能であった。しかし、退院時には多くの症例で改善が認められている。また、起き上がり動作は、横向きになることなく、坐位に起き上がり可能となるのは半年以上かかると報告されているが、半年未満での報告はない。しかし、本研究では3Mで75%の症例が可能となった。以上のことより、術後の姿勢指導をはじめとした上記訓練の必要性・有効性が示唆されたと考える。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2003 (0), D0371-D0371, 2004

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680539887616
  • NII論文ID
    130004578284
  • DOI
    10.14900/cjpt.2003.0.d0371.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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