大腿四頭筋におけるelectromechanical delayの性差および軸足、非軸足の差異について

説明

【目的】<BR>筋放電から筋トルク出現までの時間を電気力学的遅延(electromechanical delay、以下EMD)とされ、諸家は性差、年齢差についての相違を指摘しているが詳細な検討は未だなされていない。今回、我々は一定の年齢群における性差および軸足、非軸足との関係を調査した。<BR><BR>【方法】<BR>対象は膝関節に障害のない20歳代前半(平均年齢21.8歳)、31名(男性16名、女性15名)とした。測定は、Biodex社製トルクマシーン(Biodexシステム3)を使用し被検者を椅座位とした上で、ダイナモメーターのアームを下腿遠位部に取り付け、膝関節屈曲45度から角速度5deg/secにて他動的に膝屈曲運動を生じさせた。被検者に他動運動を認知したと同時に膝伸展運動を行わせ、表面筋電計にてEMDの電気信号を観察した。被検筋は適切な皮膚準備を行った大腿直筋とし、視覚・聴覚および感覚入力を可能な限り遮断した上で、測定間隔は任意とし一側3回計測した。解析は、筋放電および筋トルク出現をキッセイコムテック社製VitalRecorder2にて記録し、Bimutas-Videoを用いて解析を行った。そして筋放電出現から筋トルク出現までの時間を測定し、1)性別間での検討、2)軸足、非軸足での検討とこれらの性差について分散分析で統計処理を行った。また、軸足は被検者に片脚立位を行わせた際に支持脚として利用される側とし、非軸足は挙上側とした。<BR>【結果】<BR>1)EMD平均は男性で右31±37msec、左25±18msec、女性で右32±37msec、左25±11msecで性別間において優位差は認められなかった。2)軸足、非軸足では男性の軸足21±12msec、非軸足25±16msec 、女性の軸足25±12msec、非軸足31±38msecで優位な差は認められなかった。また、性別間においても同様に優位差はなかった。<BR>【考察】<BR>EMDは30~50msecから100msecと報告されている。膝伸筋では求心性収縮にのみ女性は男性に比し優位に遅延するとの報告があるが、詳細な検討は未だなされていない。今回、我々の研究で得られたEMDに性差はなく、軸足、非軸足においても優位な差は認められなかった。EMDは筋線維組成比、収縮様式と速度など種々の要因による影響を受けると考えられており、性差はこれらの違いによるとの報告もある。今回、我々は健常人を対象に調査を行ったが、膝前十字靱帯損傷例、膝置換術例などでEMDの遅延が報告されており、今後EMDに関与する種々の要因について更なる検討が必要である。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2006 (0), A0075-A0075, 2007

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680539969920
  • NII論文ID
    130005013292
  • DOI
    10.14900/cjpt.2006.0.a0075.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ