関節位置覚の評価法についての検討

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  • 運動軌道の変化が再現側の違いに及ぼす影響

抄録

【目的】関節位置覚の評価は、固有感覚の精度を見るために四肢相互の位置関係を記憶し、再現させることで行われるが、その過程で皮膚からの触圧覚情報などにより干渉されるため、測定する上で配慮する必要があることが報告されている。しかし、それ以外に四肢の運動開始から停止までの移動時間や運動パターンなどを記憶し、運動自体を再現することが手がかりになることも考えられる。本研究の目的は、関節位置覚の評価において運動パターンの情報が再現角度に及ぼす影響を調査することである。<BR><BR>【方法】研究の趣旨を十分に説明し同意が得られた健常成人を対象とした。これらの対象について、角度を設定した側と同側で角度を再現させる群(同側群:8名12肢、平均22.6歳)と対側下肢で再現させる群(対側群:9名9肢、平均22.4歳)の2群に分けた。設定角度は、検者が被験者の膝関節を他動的に屈曲し30度、90度とし、下肢を直線的に動かし運動軌道を変化させない運動軌道直線条件(直線条件)と様々な方向に動かす運動軌道変化条件(変化条件)の2種類の条件にて行った。再現角度の測定は、設定角度を5秒保持し記憶させた後、検者が膝関節角度を伸展0度に戻した直後に再び膝関節を他動運動にて直線的に動かし、被験者に設定角度と同じ角度だと認識したところを口頭で答えさせたものとした。膝関節屈曲角度の測定は、大腿と下腿の骨軸に合わせそれぞれの外側部にマーキングしたものをデジタルカメラにて側方より撮影し、設定角度に対する再現角度との差を求め再現誤差角度を算出した。一連の測定において下肢の筋収縮が生じないように留意し、同一の速度になるようゆっくりと動かした。測定手順はランダムに行い、3回測定した。軌道変化の有無が再現誤差角度に対する影響を比較するため、繰り返しのある二元配置分散分析および多重比較検定を用いて行い、有意水準5%にて統計処理した。<BR><BR>【結果】同側群における、直線条件と変化条件の再現誤差角度の比較は、それぞれ30度で2.7±1.9度と10.7±6.4度、90度で3.0±2.4度と12.2±7.9度となり、すべての設定角度において有意な差が認められた。一方、対側群は、30度で7.3±4.9度と9.5±6.4度、90度で4.9±4.2度と7.2±4.9度となり、すべての角度で有意な差を認めなかった。<BR><BR>【考察】本研究において同側群は対側群に比して、角度設定時の軌道を変化されると再現誤差角度が有意に大きくなることより下肢の移動時間や運動パターンを関節位置の同定に利用していたことが推察された。これにより固有感覚以外に利用しやすい情報が存在すると、その情報が関節位置覚の手がかりとなる可能性が考えられ、関節位置覚を同側下肢で再現させる際は、角度の設定時に運動パターンを一定にしないように運動軌道を変化させることが望ましいと考えられた。<BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2005 (0), A0629-A0629, 2006

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680540124416
  • NII論文ID
    130004578707
  • DOI
    10.14900/cjpt.2005.0.a0629.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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