拘縮に対する間歇的伸長運動の効果

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タイトル別名
  • 441 拘縮に対する間歇的伸長運動の効果 : 骨格筋内コラーゲンの可溶性変化に着目して(理学療法基礎系6)
  • ―骨格筋内コラーゲンの可溶性変化に着目して―

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抄録

【目的】 臨床場面で遭遇する拘縮は,不動によって骨格筋が短縮し,その伸長性や柔軟性が低下したことが原因である場合が多い.また,理学療法としてはそれらの改善を目的に伸長運動が実施されることが多いが,その効果の科学的根拠については明らかになっていないのが実状である.一方,われわれは先に不動性拘縮の病態には,骨格筋内のコラーゲン線維,中でもその架橋結合の変化が関与していることを報告した.そこで,本研究ではコラーゲン線維の架橋結合の変化を捉える生化学的方法の一つである可溶性コラーゲンに着目し,拘縮に対する間歇的伸長運動の効果を検討した.<BR>【方法】 Wistar系雄ラットを無処置の対照群と3群の実験群に振り分け,実験群はすべて両側足関節を最大底屈位の状態で4週間ギプスで不動化した.3群の実験群の内訳は1)不動のみの群(不動群),2)不動後2週間,自然回復させる群(自然回復群),3)不動後2週間,間歇的伸長運動を実施する群(伸長運動群)であり,伸長運動群には以下の方法でヒラメ筋に間歇的伸長運動を実施した.すなわち,自作した他動運動機器を用いて,麻酔下で足関節底背屈運動を4秒に1回のサイクルで行い,これを1日30分間,週6回実施し,自然回復群には同様の頻度で麻酔のみを行った.実験終了後は,麻酔下で両側足関節の背屈角度を測定し,その後,ヒラメ筋を摘出し,中性塩,酸,ペプシンそれぞれによる可溶性コラーゲンを定量した.なお,本実験は名古屋大学,ならびに星城大学が定める動物実験指針に準じて行った.<BR>【結果】 不動直後の足関節背屈角度は対照群より実験群の3群すべて有意に低値で,実験群間では有意差を認めなかった.また,不動後2週間のそれは自然回復群,伸長運動群とも不動直後より有意に高値で,この2群間では伸長運動群が有意に高値を示した.次に,中性塩,酸による可溶性コラーゲンは対照群と3群の実験群間すべてに有意差を認めなかったが,ペプシンによるそれは対照群より不動群,自然回復群は有意に低値で,この2群間には有意差を認めなかった.また,伸長運動群のそれは不動群,自然回復群より有意に高値を示した.<BR>【考察】 今回の結果から,4週間の不動によって生じた関節可動域制限は3群の実験群すべて同程度であり,その改善は伸長運動群が自然回復群より良好であったといえる.次に,先行研究によれば,伸長性・柔軟性が低下した組織のコラーゲン線維は,強固な分子間架橋結合が生成しており,ペプシンによる可溶性が減少するとされている.つまり,不動群と自然回復群の結果はこのことを示唆しており,2週間の自然回復では不動によって生じた強固な分子間架橋結合の改善は困難であると思われる.一方,伸長運動群の結果は間歇的伸長運動が分子間架橋結合の数やその強度などを減少させたのではないかと考えられ,先の関節可動域の結果と併せて考えると拘縮に対して有効な手段であると推察される.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2004 (0), A0441-A0441, 2005

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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