起き上がり動作における運動パターンへの影響

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  • 体幹への制限による比較

抄録

【目的】<BR>起き上がり動作は日常生活動作のうち最も基本的な動作であり,多くのバリエーションが観察される.我々はこれまでに年齢や性差によって起き上がり動作における運動パターンや所要時間の変化について明らかにした.そこで本研究の目的は,対象者に体幹への可動制限を加えることにより,運動パターンにどのような影響を与えるかについて検討を行った.<BR>【対象と方法】<BR> 対象者は,健常男性20名(年齢21.7±4.3歳,身長172.0±11.0cm,体重65.2±6.8kg),健常女性19名(年齢22.0±4.0歳,身長158.6±8.4cm,体重51.2±8.8kg)とした.<BR>対象者の示す運動パターンをSarnackiの分類表に修正を加えたものに基づいて分類した.<BR>測定は,2つのビデオカメラ,標準的な診療寝台,スツール1脚を用いた.ビデオカメラはベッド上の対象者右側方および対象者の足下に設置し,撮影を行った.課題は,ベッド上背臥位から右側に起き上がり,一度端座位を経て,被験者の右側方のベッド横に設置した椅子上の箱に触れることとした.条件として,胸椎用硬性コルセットを装着した状態と装着しない状態の2種類をそれぞれ実施した.なお,最小所要時間を対象とするため,動作はできるだけ速く行うように指示し,事前に十分な練習を行った後,測定を行った.<BR>計測項目は,背臥位から端座位を経て箱に触れるまでの所要時間,さらに動作課題での運動パターン分析であった.観察された運動パターンは各身体部位(左上肢,右上肢,頸部-体幹,下肢)の開始順序を対象とし,分類表の定義に基づいて分類した. なお,被験者毎の計測間の休息は任意とした.<BR>【結果】<BR> 制限を加えることにより動作遂行の所要時間は延長した(制限なし1.4±0.7sec,制限あり2.0±1.7sec).<BR> 運動パターンは全体で25パターン観察され,制限なしでは21パターン,制限ありでは14パターンであり、結果から分割表を作成し,カイ2乗検定を行ったところ有意な差が認められ(df=28,χ2=49.27,p<0.01),制限を加えたことにより運動パターンの減少がみられた.<BR>【考察】<BR> 運動パターンは胸腰椎の可動制限により,体幹の屈曲が妨げられた.その結果,下肢をベッドから下ろしながらの起き上がる,または側臥位になってからの起き上がりの運動パターンが増加し,体幹屈曲位での坐骨支持への移動パターンが減少していた.このように体幹の可動性の低下によって動作パターンが変化した結果,動作の円滑性が低下し,所要時間の延長に影響したものと考えられる.体幹の制限による各部位における特徴として下肢での運動パターンに着目すると,体幹制限の起き上がりにおいて背臥位から側方に移動し,坐骨周囲を支点とする体幹側方からの方略に変化していることが共通していた.<BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2005 (0), A0660-A0660, 2006

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680540196608
  • NII論文ID
    130004578738
  • DOI
    10.14900/cjpt.2005.0.a0660.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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